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お世話係ウォード・1

 むくりとクリスティナが起き上がった。あまりに唐突でウォードが驚いていると、素早くあたりを見回し、こちらへと駆けてくる。


 俺のところへ……と身構えたのに、すぐ脇の扉を明けて「あぁ」と悲しげな声をあげる。


 大げさなうえに動きを止めてから時間が長い。ウォードは待ちきれなくなった。



「天気が回復しないのは、そこまで嘆くことか?」


 クリスティナが横を向く速さは、これまたウォードを驚かせるものだった。

はっきりとした目に輝きが宿る。


「いた! いてくれた!」


 女優のような嘆きっぷりは「昼寝の間にひとりにされた」と思ったことによるらしい。


 勢いのまま膝にかじりつかれて、ウォードは思わず両手を降参の形に上げてしまった。

 


「夜も一緒に寝よう」

「……俺は昼も一緒に寝ていないが」

「んふ」



 そんなことは些末なことだとばかりに聞き流すクリスティナの満面の笑み。

その屈託のなさからも養い親に慈しみ育てられていることがうかがえる。


「よかったな」


 そっと頭に手をのせると、俺がいてよかったと解釈したらしい。


「朝までいてね。明日雨が止まなかったら明日もお家で過ごそう」


要求が増えた。


「ひとつ要求が通るとふたつに増やすタイプだな、(たち)が悪い」


 その言われようは心外だとばかりに、クリスティナが早口になる。


「欲張りじゃない。『母さん達が帰るまでいればいい』って言いたくても我慢してるもの」



 ウォードが明後日までいるつもりとは知らないクリスティナが小声で言う。


「……言わなくてもそうなると最高」


 もはや言っているのと変わりない。ウォードは笑いをこらえた。







 夕食は、これまでで一番硬いとクリスティナが証言した日にちの経ったパンをスープに浸したもの。

スープと言えば聞こえがいいが、湯に塩ひとつまみと香草を少々加えただけだ。


 すぐに食べ始めたウォードをクリスティナが羨ましそうに見る。


「食わないのか」

「……熱いから」


 ウォードも子供の頃は冷ましてからしか食べられなかった。いつの間にか熱いものも平気になったが。

それなら冷めるのを待つしかない。ウォードが食事を再開すると、クリスティナが恨めしげな目つきに変わった。



「なんなんだ」

食べにくくて仕方ない。


「ふぅふぅして」

「なんだと?」


 聞き返したウォードに、さも当然だという顔をする。


「ふぅふぅしてくれないと、冷めない。アンディはしてくれた」


――アンディとは誰だ。


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