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山賊の娘とお墓参りの人ウォード・4

「こんな小さな赤カブがあるとは知らなかった」


 だからカブじゃなくて大根なんだってば。でももういい、カブでも大根でも。

クリスティナの唇が尖る。


「……怒らせてもだめか」


 アンディとは違う声。時々掠れて聞こえるのはエイベル様に少し似ている感じがする。



 カリッ。乾いた音がした。続いて硬いものが割れる音。

後ろで何をしているのかが気になって、振り向きたい気持ちでいっぱい。


 自分でもよく分からない我慢をするクリスティナが、ぐっと拳を握ろうとすると、手のなかに押し込まれる物があった。思わず手を開く。



「くるみ……」


 さっきの音は胡桃の殻を割った音だったのだ。ケーキにしてもパンに入れても美味しい胡桃は、そのまま食べても美味しい。


 考えるより先に、口に入れてしまった。いい味。でも足りないと思うそばから、次の胡桃が手渡された。 

もちろんそれもすぐに食べる。


 次は? 待ちきれなくてウォードを見ると、片手にふたつ胡桃を持っていた。



「まだ食うか?」

「食べる」


 硬い殻をなんと手で割ったらしい。見た目によらない怪力の持ち主だとクリスティナは感心した。


「手で割って痛くならないもの?」

「コツがある。この出っ張りをもうひとつの方にあてて――」


 説明を聞きながらクリスティナは真剣に見つめているのに、バキッという音はなかなかしない。


 幾度か試して「割れるものと割れないものがある」と諦めようとするから、慌てた。


「くるみ割り器ある」


 挟んで割るジェシカ母さんの道具を戸棚の引き出しから急いで出して渡すと、ウォードはふっと息を吐くようにして笑った。



 さあ、これでいくらでも割って食べさせて。

期待に満ちた目を向けてから、思いつく。


「次はウォードが食べて、その次は私。そのまた次はウォード、順番ね」


くるみ割り器を手にして、ウォードが呟く。 


「木の実だけでは、たりない。なにか野菜があればな」

「私の二十日大根がある! 酢に漬けたのが嫌いじゃないなら、すぐに食べられる。生がいいならお塩もあるから、少しつけるとおいしい」


食卓に両手をかけて前のめりに提案する。



「いっそ両方?」

「いいと思う! ちょっと待ってて。他にも食べ物がないか探してくる」


 クリスティナは勢いよく「はい」と右手をかかげて提案した。

ウォードも同じ考えだったらしいのは、頬の緩み具合でわかる。



「その間に俺は胡桃を割っておくとしよう」

「たくさん割っていいと思う。母さんが楽できて喜ぶ」


 なにか間違えたかも。クリスティナにちらりと浮かんだ考えは、ウォードの平然とした態度に、形になることなく消えていった。


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