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山賊の娘とお墓参りの人ウォード・3

 暖炉におきた小さな火。もうそれで幸せ。いつもあるものが、いつものようにある。

クリスティナは少しずつ勢いを増す火に見入った。


「なにか食うと言ってなかったか」


 と聞かれなかったら、まだ火を眺めていたと思う。

そんなにお腹は空いてないと思っていたのに、きゅうっと鳴った。

「食う」と聞いて、お腹が動き出したらしい。


「いつも腹を空かせている」

「いつもじゃない」


 ウォードの間違いを訂正したクリスティナは、まだ火にあたっていたい気持ちを振り切って、台所へと向かった。



 窓辺には二十日大根の植わった鉢がある。思うに、そろそろ食べ頃だ。


 少し高い位置にある鉢は、普段はジェシカ母さんが取ってくれるけれど、今日は自分でやるしかない。


 背伸びをして指先を鉢にかけて。縁をしっかりと持ったつもりだったのに……思ったより重い。


 鉢が不安定にぐらりとして頭にぶつかる、と咄嗟(とっさ)にはね除けた。クリスティナの背後で、派手に焼き物の割れる音がすると同時に土の臭いが広がる。



――やってしまった。絶望一色に染まり、人生が終わった気がした。

散らばった土と二十日大根、飛び散った鉢の破片が床を盛大に汚しているのなんて、見なくても想像がつく。見たくない。



「どうした!」


 床に鉢がぶつかった瞬間、声とともにウォードが様子を見に来た……と思う。

振り返らないクリスティナにはウォードの姿は見えないので、あくまでも「思う」だ。



「手が滑ったか。ケガはないか?」

「ない」

「後ろに放り投げたのか」


 そうなってしまったけど、わざとそんなことはしない。そう言いたいのと同じくらい顔を見られたくない。

クリスティナは唇を固く結び下を向いた。



 カシャリ、カツン。鉢の破片同士があたる音がする。次は土を寄せるような気配、箒も使っているみたい。


 本当は自分でしなくちゃいけないのに、どうしてもしたくない。


「……ごめんなさい」


ますます顔が下を向いた。


「俺に謝る必要はない、俺のものじゃない。これを食うつもりだったのか?」


一度顎を上げて、大きく下げる。


「こんな小さなカブでは腹の足しにならない」

「……はらのたしにならない」


 繰り返してみても、クリスティナには意味がわからない。


「可愛いな」



 野菜を可愛いという男の人がいるなんて。クリスティナは驚いた。


 野郎どもは肉の違いは部位まで分かるのに野菜に種類があるとは知らなくて、オヤジにいたっては「草食動物の肉を食べれば野菜を食べたも同じ」と言い張って、ジェシカ母さんに叱られているのに。



「跡形もなくとは言えないが、ざっと片付いた。このカブを食うのか? 」

「カブじゃない。二十日大根だもん」


 背中を向けたままで答えると、笑う気配がした。


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