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ウォード 再会

 山狩りなど、城塞に駐屯する治安維持部隊だけですればいいものをハートリー兵団に召集がかかったのは、父がウィストン伯に願い出たことによる。


「失態を挽回する機会を与えられたことを、有り難く思え」


 などと言う当人はウィストン伯の側近くで仕えており、山狩りは息子に行かせるのだから気楽なものだ。

と、思ったところで父に口答えすることはない。


 ウォードは命じられたまま十五人の兵と共に、久しぶりに城塞の近くへと赴いた。








 来てみれば、拍子抜けするような状況だった。

嫌われているはずの山賊と地元の民の仲は良好と言っても過言ではなく、治安維持部隊のなかでも地元採用の者は、山賊を本気で捕える気があるのかどうか疑わしい。


 驚くほど穴だらけだと、山狩りが初めてのウォードにもわかる。



 やる意味はどこにあるのかと考えていたところ、副隊長ブレアがひとつの噂を仕入れてきた。


――城から落ちのびたマクギリス伯の娘シンシアがこの地に隠れ住んでいる。


「考えられないな」

「私も同感です、ウォード様」

 

 こんなお互いが顔見知りばかりのマクギリス派とハートリー派の入り交じる土地で、隠れ住むことが可能であるとはとても思えない。


 噂が大きくなるより先に否定を決定づけることが重要と考えたのだろう、と副隊長は結論を出した。







 ウォードがマクギリス伯の墓所に足を運んだことに、さしたる意味はなかった。

しいて言うなら思い出しただけだ。


 熱烈なマクギリス支持者は、治安維持部隊の目を恐れて墓所には近寄らないと聞く。


 山狩りをしている今なら誰もいないと思ったのに、墓碑の前には跪く線の細い男児の姿があった。


 白い首筋が遠目にも寒々しい。山狩りで道を封鎖しているが、山に暮らす人々はいる。その子供だろうと、ウォードはあたりをつけた。



 あえて立てた足音に、男児が首だけで振り返る。子供らしく柔らかそうなライトブラウンの髪。近づいても、カーブのくっきりとした目に怯えはない。


 さらに歩み寄ると、ウォードの身分が高いと思ってか、立ち上がり腕を体側にまっすぐに下げて、墓碑の正面を譲るように脇へ控えた。


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