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クリスティナの決断・3

 ぴぃちゃんはすぐに戻って来た。羽を器用に動かして「あった、舟ありました」と教えてくれる。


「ん? それは箱? 箱じゃない、と。ごめん、ちょっとわからないみたい」


 ぴぃちゃんは言葉を話さないので、クリスティナの言いたいことは伝わっても、ぴぃちゃんの言いたいことは半分理解できるかどうか。


「『箱』じゃないなら『袋に食べ物を入れて持っていくべき』?」


 じっとこちらを見てから二度三度と頭をコクコクする。

そうじゃないけどもうそれでいいですよ、という諦めにも似た雰囲気が漂う気がしなくもない。



 身動ぎひとつしないアンディに気をつけながら、クリスティナは背負い袋に食料やお金、水を入れた瓶などを詰めていった。







 ぴぃちゃんには「大丈夫そうになったら教えてね」と頼んだ。


 人に会わずに小川まで行かなくてはならない。ぴぃちゃんの判断はとても重要だ。


 「ここを出て、少し離れた村へ行こう」と持ちかけたクリスティナに、アンディの反応はぼんやりとしたものだった。


「看板に熊の絵のついたお店はジェシカ母さんを知ってる人のお店だから、助けてくれる」


 一生懸命明るく言っても、アンディの表情は暗いまま。言い方を変えても「うん」と言うだけ。


 これでは「私はそこでジェシカ母さんを待つから、アンディはお家に帰ればいい」なんて難しいお話はできそうにない。途中で説明を止めた。





 翌朝、まだ薄暗いうちにクリスティナ達は木をおりた。

無言のアンディの手をひいて小川までやって来て、昨日のぴぃちゃんの仕草に合点がいく。


 「箱」ではなくて「四角」、あったのは舟ではなく丸太を(つる)か紐で結わえた(いかだ)だった。



 なるほど、ここにあっても目立たず小川で洗濯をする時の足場かなと思う程度のもの。

見つかる可能性は低いけれど、乗るには不安になるような。


「ぴぃちゃん……これ、ふたりはダメじゃない? ひとりならいける?」


 アンディは相談相手にならないので、頼りはぴぃちゃん。薄桃色の毛先がちょいと動く。これは「ひとりなら大丈夫ですよ」だ。



 舟に乗ってふたりで村まで行って、アンディとそこでさよならするつもりだったのに。

私のお別れはいつもうまくいかない。


 クリスティナは、つい下げてしまった視線を、心を決めて上げるとアンディを振り返った。


 ゆっくりしている暇はない。「ごめん、アンディ」と断ってから、両耳を思いきり引っ張っると、アンディの目が見開かれた。


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