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お嫁さんに私どうかな・2

「『なんでも先に言ったもん勝ちだ』ってオヤジは言ってたけど、ウォードもそう思う?」


 ウォードの顔に警戒心がちらりと浮かぶ。やり方を間違えたかもしれない。


「場合による、と答えておこうか」


 話の先を聞きたがってくれればいいのに黙って私の出方を見るのは、勘がいいというか何というか。


「私が大人になったら、ウォードのお嫁さんに私どうかな」



 できるだけ何気なさを装ったのに、やだどうしよう。

瞬時にウォードの顔から表情が消えて、クリスティナは焦った。


 嬉しそうにしてくれたら最高だったけれど、それは望み過ぎかもしれないから、笑ってくれるくらいで良かったのに。

まさか反応がまるでないなんて予想外もいいところ。


 聞かなかったことにしてください、とは言いたくない。だってお返事は欲しいクリスティナである。


 

「クリスティナ、いくつだったか」

「……もうすぐ十一」


渋々答える。おませさんだと言いたいんでしょ。


「いくつで結婚するつもりだ」


 ええっ。思わず大声をあげそうになった。そのお返事は私をお嫁さんにする前提、ウォードが結婚にとても前向きとは嬉しい予想外。



「私のいい時でいいの? そんなの悪いからウォードの都合もきく」

「―――。そうではなく、一般的な女性の適齢期というものをクリスティナが知っているかどうかを聞いただけだ」



紛らわしい言い方は止めて欲しい。


「……あと十年から十五年くらい先?」

「それはクリスティナがこれまで生きてきた年月より長い」



 言われてみれば。この十年に色々あった。

 住む場所が何回も変わった。子守りの娘から山賊の娘になって、今は子役。この後ナニースクールの生徒になって宿屋の看板娘になる予定だ。



「俺が十五年、婚姻を避けるのは難しい。気持ちは有り難いが」



 ありがたい、ありがたいですって。ウォードが私にお礼を言ってくれてる。

興奮するクリスティナを、ウォードは無言のまま観察している。



「それなら、結婚はしなくても一緒に住もう。ウォードは母さんの宿で警備員をすれば?」

「その考えはおかしくないか」

「どこも。山で暮らしてたころ、オヤジは狩りをしてたし、レイは畑もしてた」

「それとは違って、俺はただの働き手では?」

「ちょっとも違わない。一緒だと思う」

 


 無表情のウォードはいつの間にか真顔。クリスティナが期待したご本のような「甘やかな熱のこもった眼差し」は、見られない。やっぱり、そんな恥ずかしくも素敵は場面は非現実的であるようだ。



「そろそろ縁談が本格的にすすみそうになっている。俺の相手は、つり合う家の子女のなかから父がみつくろう」



 クリスティナの入る余地はないのだと、子供相手にちゃんと教えてくれるところが好き。

でもいいのかな、基準がそんな不確かなもので。



「家柄で選んでいいの? 家なんて、いつなくなるか分からない。それよりウォードにつり合う女の人をみつくろったほうがいいんじゃない?」



 ウォードにつり合うのは私ですとは、さすがに図々しくて言えないけれど。

 マクギリス家も、まだお弟様が爵位を継いでいないので本家が空いた状態。戦ひとつ二カ月で簡単になくなる家を基準にするなんて愚かだと思う。



ウォードが薄く笑う。


「本質をついてくるのは、本能的なものか。時々クリスティナが怖くなる」


「怖くないよ、優しいよ」


レイをお手本に売り込んでみたけれど、なんだかダー君みたいな言い方になってしまった。



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