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お嫁さんに私どうかな・1

 クリスティナとウォードが宿屋へ着いても、レイは戻っていなかった。

馬車を返しに行った先で、劇団員に捕まっているのかもしれない。


 宿のおかみさんが案内してくれた部屋は四人寝られるようになっているのが、ウォードと寝ようと思っていたクリスティナには少し残念。


 レイは体が大きいので一緒に寝ると寝台が窮屈になる。

寝台がひとつしかない時はクリスティナとウォードが一緒に使い、レイが床だったのだ。



 桶にもらったお湯で顔と手足を洗い終わると、さっぱりした気分になる。

ふいいっと気の抜けたクリスティナはすぐ近くの寝台に寝転がった。


 自分も清潔にしたウォードに立ったまま見おろされた。


 なんだろう。あ、お行儀を良くすると決めたのでした。思い出してももう遅い。

人前でごろんとするのはどうなんだ、と注意されたら謝ろうと腹をくくる。



「頬に跡はつかなかったようだな」


 何を言われたかわからず、しばらく考えて母の平手打ちのことと思い当たる。


「お母さんは上手なの。跡は残らないようにできるのよ。泣いて目をこすると赤く腫れるから、そっちを気をつけないと」


目蓋が腫れると戻るのに時間がかかる。それに。


「涙が床に落ちるとシミになるから、拭かないといけない。結局泣かないのが一番」


 経験則を語ると、ウォードが不快感をあらわにしたので、この話はここまでにする。



「ねえ、ウォードは自分がカッコいいって前から知ってた?」

「――は?」


 寝台で、勢いよく身を起こしてクリスティナはウォードを見上げた。



「イヴリンさんが『すぐにでも役者にしたい程いい男』って言ってたじゃない? 自分でもカッコいいって知ってたのかなと思って」

「彼女は、そうは言ってなかったと思うが」



 ウォードはカッコいいけれど、お顔の傷を怖がって女の人が近寄らないんじゃないかとクリスティナは考えていた。


 でも「お化粧をすれば隠れるくらいの浅い傷」とイヴリンさんは軽く捉えていた。そうなると話は違ってくる。



「俺に何を言わせたいんだ」

「べつに」



 クリスティナが足をぷらんとさせると、ウォードの手が膝を押えた。あ、お行儀が悪かったと気がついても、これまた遅い。


 床に片方のお膝をついているのが、物語に出てくる求婚者みたい。フレイヤお姉さんの本棚にある大人のご本を拾い読みしたのは誰にも内緒。



「レイはフレイヤお姉さんが好きで、いつも自分を売り込んでるの。お姉さんの役に立つことがしたくて一生懸命なの」

「レイ・マードック様が。想像がつかない」



 ウォードが意外そうにするけれど、嘘はついてないよ私。



「ジェシカ母さんとオヤジは、そういうんじゃなくてよく悪口を言い合ってた。オヤジが負けて終わるから面白いけど、私はお姉さんとレイみたいなのがいいな。ウォードのお父さんとお母さんは仲良し?」

「どうだろう、普通じゃないか」



 あっさりと終わらせてお話にのってくれないから、やりづらい。



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