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情報屋はうるちゃん・1

「ううぅ」


 ずるちゃんが喜んでくれるようなお土産が思いつかない。

文字通り頭を抱えるクリスティナを、ぴぃちゃんが心配そうにしている。



 明日にはずるちゃんちに着いてしまうのに、通りがかった町や商店ではぴんとくるものがなかった。



 かわりに自分の欲しいものを見つけてしまって眺めていると、レイが「マクギリスの守護様のお気に召すものか?」と聞いてくる。


 私は好きだけどぴぃちゃんはどうだろうと首を傾げるクリスティナに向けて、ぴぃちゃんが「気に入ります、気に入ります」とする。



「ぴぃちゃん、これ好きって」

「では買おう」


 そんなやり取りを繰り返し、可愛いお荷物が増えた。




 ただ今、レイは熊印のお店に話を聞きに、ウォードは剣の手入れを頼みに出掛け、クリスティナは宿の部屋にひとり。

というわけで心置きなく頭を抱えることができる。



 ぴぃちゃんはそんなクリスティナの膝に足をかけ、器用に羽根を動かす。


「え、なに?『これ全部あげるから元気出して?』」


 ぴぃちゃんが、ふんふんとする。レイがぴぃちゃんにと買った物を丸ごとクリスティナにくれると言うのだ。



「ぴぃちゃんのために、買ったんだよ?」


 言って、知性のきらめくぴぃちゃんの瞳を見つめるうちに気がついた。


「ぴぃちゃん、ひょっとして最初から私にくれるつもりで?」



 ぴぃもいいなと思ったので。足をタシタシするのは、きっとそう。やだ、感激して涙が出ちゃう。


「ぴぃちゃん! 大好き」


 たまらなくなったクリスティナがぎゅっと抱きしめると、ぴぃちゃんも嬉しそうにする。


 もういいや。このなかから、ずるちゃんに選んでもらおう。ずるちゃんのお気に召すものも、ひとつくらいあるでしょ。

 

 決めたら心が軽くなり、ウォードとレイが戻るまでぴぃちゃんと遊ぼうと思った直後。



「今日も仲良しだな、おふたりさん」


 うわ。お祭りで絡む野郎みたいな下品なセリフと共に部屋に現れたのは、誰と聞かなくても分かるはうるちゃんだった。


 せっかくふたりで過ごそうと思ったのに、ぴぃちゃんも微妙な目つきになっている。



「なあなあ、なんでこんなとこに、いる?」


 はうるちゃんが不思議そうにするのは、クリスティナが城砦からルウェリン城へ行くと知っていたからだ。


「ずるちゃんちに寄ってから行こうと思って」

「そっか。そういや、アガラスの息子が俺んち来てるぜ」



へえ、そうなんだ。何気なく聞いて。

「え?」

からの

「はあっ!?」


のけぞるほどに驚き、声が大きくなってしまった。


「クリスティナ、声デカすぎ。他の部屋から苦情くんぞ」

「……ごめんなさい」



 だって、ご当主は旧マクギリスの城砦にいて、ご子息がルウェリン城にいたら、私達は誰と交渉してお屋敷に入れてもらうの? と思ったんだもん。



「耳がキーンとしたわ」


 うるさそうにオヤジ狼に顔をしかめられて、クリスティナは身を縮めた。


 

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