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ずるちゃんにお土産を持って行こう

 ずるちゃんに手土産を持って行きたい。クリスティナはレイに相談した。


 重量の関係で、クリスティナとレイ、ウォードとお荷物という組み合わせで馬に乗っている。


「手土産?」


いるのか? とレイは気乗りしない感じだ。


「でもレイ、ずるちゃんにはダー君が迷惑をかけたでしょ。私達の印象は良くないと思うの」

「それは……」



 王城の部屋にダー君が無理やりずるちゃんを連れてきた時の衝撃を、クリスティナは鮮明に覚えている。


 レイはきっと「ダー君はルウェリンさんちの守護様じゃないから、迷惑料はダー君の主が持てばいい」と思っている。しかしクリスティナの意見は違う。



「私達が『ダー君はひどい』と思っているのを、ずるちゃんは知らないでしょ。ダー君の『仲間』がずるちゃんを捕まえに来たと思うかもしれない。一緒にいたから、ずるちゃんがそう考えても不思議ないよね」



 いつか聖王様に払ってもらうつもりで立て替え払いでもいいから、なにか持って行こう。クリスティナが熱心に誘うと、レイも考えを改めたようだ。



「押しかけて家探しをしようというのだから、クリスの言うことも一理か」

「いちりだよ」


 流れは傾いた。いちりって何? とは聞かずにうんうんと頷いておく。



「しかし、クサリヘビの好物とは?」


 そんなことをクリスティナが知るはずもない。そこはレイが考えてくれないと。


 前を行くウォードはそれまで話に加わってはいなかったけれど、聞こえていたようで振り返る。



「生き餌。ネズミなど喜ばれるのでは」

「!?」


 それは予想外と固まるクリスティナをよそに、レイが納得顔をする。


「なるほど。それなら鳥はどうだ?」

「クワッカー」



 お空を気持ちよく飛んでいたぴぃちゃんが非難がましい声をあげる。聞こえたなんて、よいお耳だ。


 そして「ぴぃちゃんを差し出す」とは言っていないのに反応が過剰なのは、はうるちゃんにぱくりとされたのが、とても不本意だったのだろう。

分かるよ、あの時は私も腰が抜けそうになったもん。クリスティナは心からの同情をぴぃちゃんに寄せる。



「レイ。ぴぃちゃんが嫌がってる」


 はっとした顔のレイが辺りを見回す。ぴぃちゃんの姿を見ることができないので、クリスティナが「上、上」と教える。


「守護様! 軽率な物言いをお詫び申し上げます」

「ぴぃちゃんが『もういい』って」



 ぴぃちゃんは優しいから「いいですよ」までが早いのだ。クリスティナが伝えたのに、レイは顔色を悪くする。


「クリス、マクギリスの守護様のお気に召すものも買おう。許しを乞うのに、献上品なしでは不足がある」


 ぴぃちゃんは「いいですよ」と言ってくれているのに、さすがレイは礼儀正しい。



「クリスティナ、レイ・マードック様との間に誤解があるようだが」


 首をひねるようにして振り向いたウォードが言う。

ないと思うし、元はウォードが「生き餌」なんて言ったせいだ。



「謝ったからといって許されると思うのは傲慢な考えだ。一歩ずつ信頼を得なければ」



 レイの呟きは弱々しい。

聞き流しつつ、ところでずるちゃんは物を食べるのだろうか、とクリスティナは真剣に考えていた。



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