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山の秋冬

 クリスティナが選んだのは、タンポポのような黄色の毛糸。そこに茶色と白でどんぐりと鳥の模様をいれてもらう。


 アンディから見ると「不思議な組み合わせ」らしいけれど、「わたしの好きなもの」ふたつだから不思議じゃない。


 クリスティナのセーターを編み上げたら、アンディのにとりかかると知ったオヤジが、文句を言う。


「おいおい、今年は俺のを頼んだだろ」

「背も伸びないんだから、一昨年のを着ときな」


 ジェシカ母さんが突き放すのを「そうだそうだ」と思うクリスティナ。でもオヤジは引き下がらない。


「虫がくってんだよ」

「着てりゃ分かりゃしないよ」 

「……」


 母さん強い。クリスティナがくふっと笑ったのを見逃さないオヤジと目が合い、慌ててそらす。



「クリス、ちょっと背中」


 編みかけのセーターを背中にあてて大きさを確認されるのが、好き。

ジェシカ母さんが編み針を高速で動かすのを眺めるのも好き。


 楽しみは朝起きて、セーターの進み具合を見ることだ。



 小さくなったベストをほどいた毛糸で、クリスティナも編み物に挑戦する。といっても紐を編んでいるだけ。

 ちゃんとしたものを作る前には練習がいるらしい。


 アンディも一緒に編み物を始めた。同じようにしているのに「筋がいい」と誉められている。


「ねえ、私がアンディのを編むから、アンディは私のを編んで」

「それって僕のほうが上手にできそうだからだよね」


 クリスティナの考えなんて、アンディにはお見通しだった。でも手袋を編めるようになったら、贈りっこする約束はしてくれた。


「クリスの作る手袋は、指が一本分足りなくても驚かないよ」

「そこは驚いて欲しい……」


そうするうちに、冬はそこまで来ていた。







 今日は寒い。そろそろ初雪が降るかもしれない。夜だけいれていた暖炉の火は、日中も赤々と燃えるようになった。


 薪は、アンディがせっせと「親の敵のように」真顔で真剣に割っているので、切らす心配もない。使いたい放題だ。



「クリス、鳥さんは今も見えるのかい?」

「呼んだら見える」


 ジェシカ母さんの質問に、応えるクリスティナは台所仕事のお手伝い中。洗ったばかりの食器を拭いているところだ。


「クリスになんか教えたそうにはしてないかね」

「あんまり、わからない」


 いつも視界にいるわけではなく、ぴぃちゃんどこかな? と思うと「ここですよ」と出てくる。


 ジェシカ母さんが珍しいことを言うから目で探すと、暖炉の極近くで羽根を広げて全身に温風を感じていた。

あまりに近くて火の粉で羽根に焦げができるんじゃないかと心配になる。


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