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最強王のお出まし・3

「……それは、俺もかねてより気になっていた」


レイがぼそっと呟く。


「元ならいいだろ、元なら」


 はうるちゃんが、どこに問題があるんだと言いたげに全く気にしないのは、他人事だからか種の違いか。



「クリスティナ、脅すようなかたちになって、すまない」


 ウォードが真っ直ぐに目を見て謝ってくる。クリスティナは急いで「ぜんぜん」と否定した。


 怖かったのはウォードがどうとか、そういうのじゃなくて。気持ちをうまく言葉にできないのがもどかしい。


「謝っていただいては、私こそ恐縮です」



 「あ、言葉選びが変になっちゃった」と思ったら、ウォードとレイが僅かに顔を歪める。

はうるちゃんが舌を出した。



「んじゃま、そういうことで。クリスティナ、べっぴんさんを呼びに行くか。そろそろ仕事も終わるだろ」

「はうるちゃんも一緒にお迎えに行くの?」


他の人には見えないからいいけど。


「なんだ、俺が一緒だと不都合でもあんのか?」

「ない、ないけど」

「こいつらは、これからまだ話すだろうから、戻ったダーの相手は任せようぜ」



 ダー君から逃げるためでしたか。それなら、はうるちゃんは一足先にお家に帰ればいいよね、なんて野暮なことは言わずにおく。


「まっ暗になる前に、行こう」

「おう。腹はしまっとけよ」

「はうるちゃん、くどいよ」


 自分はお腹を出すどころか、服を着ていないくせに。


 扉を開け、はうるちゃんを先に通して、首だけで振り向く。

ウォードとレイの神妙な顔つきに向けて、にっと笑う。


「また、明日ね。ウォード」

「ああ」


 にゃーごちゃんもね。心のなかで呟いたクリスティナを、にゃーごちゃんは目を細めて見送ってくれた。










「ねえ、はうるちゃん。ぴぃちゃんがいても伯爵様とエイベル様が命を失くしたのは、どうしてかな」


 廊下から玄関ホール、そして庭に出たあたりでクリスティナが尋ねると、肩の上でぴぃちゃんが「ぎょっ」としたのが伝わった。



はうるちゃんはゆったりとした歩みを止めずに返す。


「戦況が刻一刻と悪化してくのは、空から見るぴぃにはよく分かる。当然、逃げ道を探し見つけ出して幾度でも教えたろうさ。でも当主は逃げることを良しとしなかったんじゃねえか」



 そうなの? ぴぃちゃん。しゅんと項垂れているところをみると、そっくりそのままなのだろう。


「そればっかりは仕方ねえ。一等大事にするもんは、それぞれだから」

「それぞれって?」

「矜持とか、威信とか。上に立つ者の役割、自負。負けん気、当主だから、男だから。負けると分かっても最後まで努力するのも、打開策を模索し続けるのも、本人が望むなら止めようがねえよ。ぴぃはよくやったさ、クリスティナを無事に護りきったんだから。充分だ」



 ん? ぴぃちゃんが感極まっている。私もなんだか目頭が熱くて、鼻の奥がツンとする。

 クリスティナがこっそりと鼻をすするのに気がつかないふりをしてくれるオヤジ狼。


「はうるちゃん、ありがとう」

「ふん」


そっけないひと言が胸に染みた。



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