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クリスティナの獣園・3

 ウォードは無言のままクリスティナの真ん前まで来た。そしてこれまた黙ってクリスティナの上着を両手で合わせ、ボタンをとめる。


 どうやらウォードもお腹が気になったらしい。見えないようにされては、この服の良さが台なし。地方では「ちら見せ」は受け入れられないようだと、クリスティナは諦めの気持ちになる。



「腹を冷やすな」


 ウォードの言葉にはうるちゃんが深く頷く。本当にもう、「お腹」って言ってよね。



「ダーはおヘソ可愛いと思ったよ」


慰めてくれてありがとう、ダー君。


「ダーも可愛いのよ、見る?」

「冷えるといけないから、やめとこう」


 私が出させてもらえないのに、ダー君だけ出すのはズルいもん。


「ダーのぽんぽん、かわいいのに」


 残念そうに唇を尖らせる。可愛いと自覚してやってるよね、お腹を出さなくても文句なしに可愛いから、しまっておこうね。



やり取りを眺めていたウォードが呟く。


「クリスティナに会うたびに俺は質問ばかりしているが、ここまで訳が分からないのは初めてだ」

「そう?」


 

 一度天井を見上げたウォードが短く息を吐き、クリスティナに視線を定める。


「お揃いの方々は守護様という認識で合っているか」

「うん」


おお、さすがウォード。理解がお早い。



 はうるちゃんが「こいつだろ、クリスティナの好きな男」と思わせぶりな目配せを寄越すから、足を踏むことにした。


 ひょいと避けられて、床を空打ちしてしまったのが悔しい。そして、してやったりの顔をされたのも腹立たしい。

いいよ、はうるちゃんとはもう遊ばないんだから。



「ウォードは、にゃーごちゃんとよく会うの?」

「いや、御姿を拝見するのも初めてだ」


 え。そう言えばレイもはうるちゃんと会った時にそんな事を言っていた。

私とぴぃちゃんみたいには、一緒に遊ばないようだ。



「クリスティナが珍しいんだって、いい加減気づけよ」


はうるちゃんの呆れ口調に。


「そんなの言われなきゃ、自分じゃわかんない」


 他と比べようがないのに気づくはずがないでしょ。ふくれるクリスティナをウォードが凝視する。



「なんだ、山猫の」

「なに? ウォード」


はうるちゃんとクリスティナの声が揃う。


「――会話が成立する?」


なんだ、そんなこと。


「ぴぃちゃんは人語はわかるけど話さないの。にゃーごちゃんは無駄口をきかないタイプみたい、いつも上品で素敵なの。はうるちゃんは話せるけど……」


 ちょっとオヤジっぽくて品がないのが残念な狼、それがはうるちゃん。


「おい! 他を上げて俺を貶めるな、クリスティナ。俺は格が高いから人語を使えんだよ」



はうるちゃんの抗議を聞き流すクリスティナの代わりに。


「うふふ。ダーもお話できるよ。ダーは知らなかったよ、狼がそんなに偉くなったなんて」


 ダー君、お口はにっこりなのに、少しだけ怖いよ。クリスティナの隣で狼がぶるりと身を震わせた。



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