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本番前夜・2

「お断りしましょうか」


 あっさりとフレイヤが言うので、クリスティナは慌てた。


「お姉さん『男の子』で誰か分かったの?」

「ティナちゃんを『クリス』と呼ぶ男の子の心あたりは、アンディくんだけ。今朝お父様と散歩されているのを見かけたの。寄ってこないだろうから伝えるほどのこともないと思っていたのに」


「寄ってこない」ってフレイヤお姉さん、アンディを犬みたいに。


「本館に出入りするお客様に、それとなく聞いてみたの。どうやら、ウィストン伯爵がマクギリス家との融和を演出するために招いたみたいね。レイさんの見方では、招待に応じたマイルス様に対し地元は不満を持つのではないか、ということだったわ。有事に駆けつけなかった弟さんに対して元から悪印象があったでしょうから」



 なるほど、義理といえどもその息子のアンディは、この城で居心地が悪いんじゃないのかな。

 都育ちのお弟様が戦場に駆けつけたところで、なんの戦力にもならないのは地元民も分かっていそうなものなのに。白眼視されるのはクリスティナから見ればお気の毒だ。



 マクギリス家に仕えていたというより城砦で仕事を得ていた人々は、上が変わっても続けて働いている。


 マイルスさんは、ひとりでは来づらくてアンディを同行させたのではないかもしれない。





「違ったら、ごめんね。クリスティナじゃないかい?」


 昨日、低く抑えた声で聞いてきたおばさんは、なんとなく覚えている人だった。


「クリスティナよ。おばさん、ひさしぶり」


笑顔を返した瞬間に泣かれて、びっくりした。


「おばさん、あんたが死んだと思ってずっと冥福を祈ってたんだよ。まさかお日様の下でまた会えるとはね」



 そんなに心配してくれていたなんて。クリスティナは全く知らなかった。


「あんたとシンシアお嬢様は、この城の宝だったろ。みんなして大きくなるのを楽しみに見守ろうって言い合ってたのに、あんな……あんなことにねえ」


 おばさんが、どんどん鼻声になっていき、ずるっと鼻水をすする。



「ジェシカ母さんがひろってくれて、今はちょっと一緒にいないけど、劇団で子役をしてるの。明日大活躍するから、見に来て。そんな長い劇じゃないから」


 涙ながらに頷いてくれる。

「そうかい、ジェシカと一緒なら安心だね」


 このおばさんもジェシカ母さんと働いたことのある人らしい。


「今日はジェシカは?」

「来てない。王都で宿をやろうって言ってて、色々と忙しいから」


 

 ハートリーさんのことを表向きは受け入れているけれど、本当のところはどうなんだろう。


 お弟様だけでなく、アンディもあまり歓迎されていないんじゃないかな。

思い出しつつクリスティナが階下へ行くと、人待ち顔のアンディが緊張感をみなぎらせて直立していた。




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