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謎解き

 ウォードが頭を撫でたそうにしている……ような気がする。クリスティナはウォードの手を取って自分の頭に乗せて、ごしごしした。


「頭で手の汚れを落とすのは、山賊の作法か?」


 え! 慰めてくれたいのかと思ったのに。すごい誤解。



「欲求に素直すぎないか」

「ウォード知らないの? 子供はみんなそう」 



 やっぱり分かっていたんじゃない。ウォードは時々意地悪をする。でも撫でてくれるから、いい。



「なぜ急に伯爵が生きていると言い出した?」


詰問調ではなく軽い聞き方。


「だって伯爵様の声だった」



 「それ相応の地位が欲しい」と助力を願う男声は、伯爵様のもの。だからクリスティナは「これまで上手に隠れ暮らしていたけれどそろそろ表に出たいと望んでいる」と理解した。


黙考するところを見ると、ウォードの解釈は別のようだ。



「俺は伯爵の声は知らない。逆に、クリスティナが伯爵だと思った男の話し相手の声なら知っている。アガラス家の当主だ」

「ずるちゃんちだ」


ウォードが微妙な目つきに変わる。


「クサリヘビの」


言い直すほどのことでもないでしょ、意地悪。



 それでは、整理しますと。伯爵様とそっくりな声の持ち主がアガラス家の当主と人のいない場所で立ち話。

 アガラス家ご当主は、風の噂で「城砦の陥落には裏切り者の存在があった」と聞いた。そして「伯爵令嬢が出たきたらどうする?」と、穏やか声音とは似つかわしくない不穏な発言をしていた。



「ね、伯爵令嬢ってシンシアお嬢様のこと? ひょっとして庶民に交じって暮らしているのをウォード達が見張ってるとか?」



 ジェシカ母さんの動向も、緩やかながら監視されている。母さんは「あの人達も仕事だからね」と気にしていないし、レイも平然としたものだけれど。


 クリスティナとしては、ジェシカ母さんが宿を開業したら、見張りの人も泊まればいいと思う。定期的にお客さんになってくれるなら、見張りさん大歓迎だ。



 待っても、黙したウォードはクリスティナの頭を惰性で撫でるだけ。


「ねえ、教えてってば。ちゃんと内緒にするから」

「抱える秘密が増えると、端からこぼして歩きそうだ」



 これはまた、大事な物を質にしないといけないかもしれない。クリスティナの密かな考えは、顔に出ていたらしい。


「物はいらない」


即座にお断りされた。そうですか、そうですか。



「俺が掴んでいるようなことは、レイ・マードック様もご存知だろうから」


そうなの? それで?


「アガラス家がマクギリスのご令嬢を保護しているのではないか、と俺は考えている」

「えっ!」

「それを表立って問いただせば、不調和を生む。アガラスの考えは読めないが、動かない以上こちらから仕掛けるのは避けるべきだと、父は判断しているのだと思う」

「お父さんが、そう言ってた?」

「あくまでも俺の勝手な推測だ」



話しているうちに、アンディを思い出す。


「アンディは誰と来てるの?」

「マイルス・マクギリス様」


 レイと弟のラング様の体格が似ているように、声の似た兄弟だっているに違いない。


「伯爵様だと思ったのは、アンディのお父さんだ。きっと」

「おそらく」


クリスティナが同意を求めて見上げたウォードも、頷いた。



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