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この日助けてくれる人は・2

 疑問に思うクリスティナからはウォードが盾のようになりアンディは見えない。


「どこに女の子が? かわいく見えるからと間違えては、失礼では」


――ええっ?


 ウォードの「これは男の子だ」発言に仰天したクリスティナは、すぐに理解した。


 頭は、布を「海賊巻き」と呼ばれる形にしているので、ぎゅっとまとめた髪は包まれて見えない。女の子はスカートを着るものなのに、クリスティナは海賊らしいパンツだから、たしかに今の私はどこから見ても男の子だ。



アンディも気がついたらしい。押し黙る。


 きっと怯んだお顔をしているだろう、アンディは正直だから顔に出る。大人のウォードにクリスティナが連れて行かれると勘違いして見過ごせなかったのは、心根の良さだ。


 でもやっぱり甘ちゃんだなあ。大人相手に無茶をする。

 ふり絞るくらい勇気がいったことだろう。クリスティナはじんわりと温かな気持ちを噛みしめる。



 ウォードだからいいけど、これが別の人だったら、何をされたか分からない。


 始末に困るものを隠す場所は、お城ならいくらでもある。何かに誘われてふらふらと歩いて行き戻らなかった人の話は、やまと聞いた。

だからひとりで知らない場所へ行ってはいけません、なのだ。



 もういいでしょ、ウォード。クリスティナはウォードの背中を突付いた。反応がないので、ゲンコツを作り叩く。


 うるさそうに首を横に振り、後ろを見ないままでゲンコツを掴まれた。あれ。



「年長者としての助言と取ってもらいたいが、物事は正確に見る必要がある。現況、私が子供を連れているのではなく、私が子供に連れられている。マクギリス家の聡明なご子息ならばご理解いただけると存じますが」



 ウォードが嫌味っぽい。引き止められて面倒だと思ってる。


「そのくらいに、してあげよう」


 アンディに加勢すると、クリスティナの手の動きを封じるかのように握る力が強くなる。もちろん痛くない。



「アンドリュー様、アンディと呼ばれたことは?」

「!」


 アンディが驚いているのが、クリスティナにも伝わる。ウォードが「ああ」とでもいうように首を動かす。


「見た目通りの優しさで、なんでも『いいよ、いいよ』と請け合われると後の者が苦労する」



 何言っちゃってるの、ウォード。人生訓だと、アンディは良い誤解をするだろうけれど、それはお腹を枕にすることとか、手を繋ぐこととか、熱いものをふうふうしてくれることとかだって、私分かっちゃったよ。


 ウォードは、クリスティナの「アンディ」が目の前のアンドリュー・マクギリスだと気がついたのだ。



これ以上話しては、私が変な汗をかく。


「ウォード、早く行かないと日が暮れちゃう」


 言って、ウォードから手を引き抜き先に歩き出す。アンディに挨拶するのはやめておく。「クリス」ではなく「女の子」と呼ばれたし「男の子」なので。



 ウォードの「戻り方はお分かりですか。晩餐までどうぞごゆるりとお部屋でお過ごしください」を背中で聞きながら、クリスティナはアンディの顔を思い浮かべていた。



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