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今明かされるクリスティナの父

 屈伸も伸身も完璧な宙返りを見せたのに、ウォードは三階から飛び降りるのはダメだと言って、考えを変えなかった。


「私の宙返り、すごいと思わなかった?」


 褒められたいクリスティナに、ウォードは渋い顔をする。


「将来何になりたいんだ。それは子守りに必要な技術か」


 暗にナニースクールに行くんじゃなかったのか、と皮肉を言う。



 ナニースクールの入学と巡業が重なるので、女優業(ここは強調したい)を優先して、入学を一年遅らせることにしたのだ。学校は来年もあるのだから、急ぐことはない。



「つまんないこと言う」


 クリスティナの正面きっての文句に、ウォードが目元を険しくさせる。左目を隠していても迫力満点。


「睨んでもカッコいいね、ウォードは」


 自分では分からないだろうから教えてあげたのに、呆れられるのは納得がいかない。それなら別のことを話そう。



「ウォード、お願いがある」

「――なんだ」

「前庭館じゃなくて、本館に行きたい。ダメかな」


返事がないので、少し変えてみる。


「ひとりじゃなくてウォードも一緒なら、いいでしょう?」


 探るような眼差しを受け止めて、クリスティナはうふんと笑ってみせた。










 庭に置かれた石造りのベンチに腰掛け、フレイヤは腕組みをした。淑女らしからぬ態度であるのは承知のうえだ。



 今回ウィストン伯爵の来城がないとは、ジョナサンから聞いている。

 目に見えないところでくすぶっている反ウィストン反ハートリー感情を気にしてのことだろう。慎重かつ賢明だ。



「こんにちは、ダーだよ」


 考えごと中に、いきなり膝の上に乗られたフレイヤの驚きは大きく、のけぞった拍子にベンチから落ちそうになった。



 ダー君に大切な手紙を託すのを危ぶむのは、ジョナサンも同じだったらしい。幅広の布に書いてダー君の肩から腰に斜めがけにした状態で届いた。王のお手紙はこれだと教えてくれるので、外して広げる。


「なんてことなの、気が遠くなりそう」


 フレイヤの呟きをひろい、ダー君が心配そうに顔をのぞく。


「戻ってきて、もとひ。ダーを『可愛い、可愛い』する? 」


 つぶらな瞳にはただ可愛いと言われたい欲求が満ちている。正直でいい。



 ジョナサンは、クリスティナの父親についてあっさりと明かした。

 父親はマクギリス伯。根拠はマクギリス家の守護とされるカラスがクリスティナについていること。



 先日届いた手紙では「王城でフレイヤが見かけた子供。ローガン・アガラスが連れていたのはアマリアと名乗る少女の可能性が高い。彼女と共にいる女性はメイと名乗っている」と知らせてきた。


 メイジーとメイ、名前もほとんど違わない。同一人物ではないか。



「でも、ティナちゃんがマクギリス伯の実子だとするなら、本当のシンシアお嬢様はティナちゃん?」



 有事に備えて娘を取り替えて育てるなど、作り話めいている。実際にすることがあるだろうか。


 フレイヤの頭は混乱中。シンシアお嬢様とメイジーさんがアガラス家にいると確定したら、ティナちゃんに伝えるつもりだったのに。


 フレイヤはダー君の髪に顔を埋めた。柔らかな感触が心地よい。



 ティナちゃんのお父様がマクギリス伯だなんて、とんでもないことを知ってしまった。どう伝えたらいいのだろう。


クリスティナはマクギリス家の正統な後継者だった。



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