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クリスティナの巡業旅始まります・1

 巡業への期待に胸を膨らませたクリスティナを乗せた馬車の旅路は、順調そのもの。


 宿を一度にたくさんは押さえられなかったとかで、先発組の後を一日遅れで後発組がたどっている。



 先発組の会計係はイヴリン、後発組の会計係はフレイヤ。出発式のイヴリンの挨拶はクリスティナに強い印象を残した。



「みんな、よく聞いて。これから大切なお話をします。出発から解散までの間、フレイヤは私の右腕や相棒ではなく私そのものだと思うこと。フレイヤが黒と言ったら灰色でもそれは黒です! フレイヤを敬うようにね、でないと財布の紐が固結びになるわよ。あと、先発組には警備が同行しますが、予算の都合上後発組にはつけません。トラブルは自己責任で避けること。もしもの時はレイ・マードック様を頼りましょう。マードック様よろしくお願いします。では出発! 後発組のみんな、現地で会いましょう!」



 最高に長かったような気がする。そしてとてもすごいことを言っているのに、声が軽やかなので「あ、はいはい」と聞き流してしまうのだ。


 

 先発組の見送りにクリスティナとレイと共に来ていたフレイヤの顔には、薄い笑みが浮かんでいた。


 なんだか少し怒っているような。クリスティナは顔色を窺いつつ、小声で尋ねた。


「お姉さん、大丈夫? 」

「ええ、もちろん。諦めはついたから、ここからの私は最強よ。第二のイヴリンとして長文で話すことにするわ」

「……そこは真似しなくてもいいと思う」








 そんなこんなで始まった巡業の旅。心が弾むクリスティナといるうちにフレイヤの表情も和んだ。


 それはレイの細やかな配慮によるところも大きい。

男性の部屋に空きがある時はそちらへいき、クリスティナとフレイヤの二人部屋にしてくれることも、そのうちのひとつだ。


 

 早朝、クリスティナがぱちりと目を覚ますと、必ず先に起きているフレイヤが、珍しく今朝は熟睡している。


 レイが別室だからかもしれない。せっかくの眠りを妨げないようにと静かに静かに身を起こしたクリスティナは、フレイヤの寝台を見て、ぎょっとした。



 横向きに寝ているフレイヤの腕が三角にあいたところに、すっぽりと金髪の男の子が収まって眠っている。

バラ色のほっぺが幸せそうなダー君だ。


 夜から来てたっけ。考えて、いつものように自由に来て、お姉さんが寝ていたから勝手にもぐり込んだのだと結論を出す。



 目が覚めたらお姉さんはびっくりするに違いない。

クリスティナがドキドキしていると、背中に何かがあたった。なんだか覚えのあるあたり方。


「はうるちゃんまで?」


 なんと、部屋にはダー君だけでなく狼はうるちゃんまでいた。クリスティナの背中を鼻先で突いて、にっと笑う。


 女の子の部屋にノックもなしに入っちゃだめとか、もはや言う気にもならない。



「よう、クリスティナ。俺んちへ来るんだってな」


 ダー君を気にしてか、はうるちゃんは小声。当然クリスティナも小声になる。


「先に城砦行って、その後ね」


 上演の日程までは知らないだろうと教えてあげると、狼は当然知っているという顔をした。



「王に聞いた。そんでクリスティナ、ずるんとこも行くのか」


 はうるちゃんの言う「ずる」は、クサリヘビのアガラス家のこと。



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