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トントン拍子

 ものごとがまとまる時は、トントン拍子にいくものらしい。


 クリスティナが劇場で稽古をしていると、イヴリンが明らかに興奮した様子で駆け込んだ。

その勢いに全員が動きを止め、イヴリンに注目する。



「皆さん、良いお知らせといいお知らせ、どちらを先に聞きたい? あら、言い方を間違えたかしら。これは良いお知らせと悪いお知らせの時の決まり文句よね。でも今日は良いお知らせしかないのよ、残念ながら。ん?『 残念』は違うわね、大満足ですもの」



 ひとり納得しているけれど、クリスティナを含めて聞いているみんなが「イヴリンさん少し落ち着きましょう」と思っている。

でも言ったところで変わらないので、待つのみだ。



「ふふふふふっ。先に話していた地方巡業が決定いたしました! 上演確定が城砦、アガラス領の秋祭り、ルウェリン家の城下町です。他にまだ交渉中の話がいくつかあるわ。これで採算が取れるし宣伝になるし、現在交渉中のお話が決まればそれはすべて儲け! ということで、お衣装だけでなくお招きにあずかった場合に備えて皆に服を仕立てて差し上げます。早めに衣装部に顔を出して、好みを伝えてください」



 息継ぎなしで言い切ったイヴリンに、女優さんよりすごいと感心するクリスティナ。


「ええと、長すぎてよく分からなかった」

「私も途中からついていけてない」


 大人の俳優さんが囁き合うのがおかしい。クリスティナが簡略化して教える。


「儲かる地方公演が決まったから、私達に先渡しのごほうびで服を作ってくれるって。今日明日にでも衣装部に行きなさいって」


 

 それなら分かる、と感謝されている間にも、イヴリンの次の話が始まった。



「それで移動日数を考えると、稽古日がこの後一週間しか取れないの。みんな頑張って仕上げてちょうだい。組はふたつ作ります。ご依頼を受けて日程が重なったら、二組同日別の場所での上演もありうると考えてください。巡業に耐えられるよう演技は当然体調も完璧に仕上げることを望みます。言うまでもなく巡業中の『心付け』は、もらった人のものよ。取り上げたりしません。誰の演技、誰の美貌が一番の人気を呼ぶかしらね? 戻ってからの配役にも間違いなく反映されるわね。ああ今から楽しみ! 私も忙しくなるわ」



 怒涛のように話すだけ話し軽い足取りで去っていくイヴリンを、止める者はなかった。


 結構な無理を言ってきたのに、皆の耳に残ったのは「心付けは本人総取り」だろう。クリスティナでも分かるくらい目の色が変わっている。


 組をふたつ作ると言った。前後半で分けるのか、場所によるのか。城砦とルウェリン城へ行きたいというわがままは通るだろうか。



 クリスティナは知っている、こういうのは根回しが大切なのだ。フレイヤお姉さんからイヴリンさんに頼んでもらおう、そうしよう。


やる気みなぎる人々のなかで、ひとり頷いた。



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