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だとしたら?・3

 ソファーに座るフレイヤの膝の上でダー君は甘えた顔をする。


「ダーは良い子だよ」


 可愛いのは間違いないが「良い子」はどうだろうか。フレイヤが内心疑っていると。


「だって、王もほめてくれるよ『いい性格をしている』って」


 くふっと得意げに教えてくれるその「いい性格」は、意味が違う。そう本人が気がつく日は来るのだろうか。



 ヘビを捕まえて、輝くばかりの笑顔でにゅるにゅるしていた光景は、フレイヤの脳裏に焼きついてしまっている。再見したくないもののひとつだ。

「やめて」と言うと、喜んで繰り返すのが子供という生き物なので、その話題には触れずにおく。



「ダー君は、お手紙を届けに来てくれたの?」


手にはなにも持たないように見えるけれど。


 ダー君はきょとんとして「ないよ」と瞬きもせずフレイヤに返す。


 それは意外。では何をしに来たのだろう。疑問をそのまま尋ねるのは、はばかられる。



「あら、じゃあ私に会いに来てくれたのかしら」

「うふふ。ダーは、もとひに会いに来たのよ」



 蕾がほころぶように笑みが広がるさまは、フレイヤが目を奪われるほどの愛らしさだ。


「あのね、ダーは、もとひのおうちによく来てるの。王が『迷惑になるから行ってはならない』っていつも言うから、ご挨拶は止めてるんだよ」



 あ然とするフレイヤに、屈託なく言ってのける。

それはつまり姿を見せなければいいと思って自由に出入りしている、ということだろうか。


 ひょっとして、コウモリ天使だけでなく男前狼と賢い白カラスも気ままに訪れている……? 見えないから気がつかないだけで山猫も。

我が家は動物天国か守護獣の別邸と化しているのかもしれない。家主である私が知らないうちに。



 フレイヤは思わずこめかみを押さえた。いや、考えてはダメ。見えないものはないのと同じ、と自分に言い聞かせる。


 不意に柔らかなものがフレイヤの額に触れた。目を開けると、至近距離からダー君が心配そうに手を伸ばしている。

額に触れたのは、ダー君の手だった。



「もとひ頭いたいの? 『いたくない、いたくない』する?」


 原因に優しくされてもねと思いつつ、ほっこりしてしまうのは本当。



「大丈夫。もう治ったわ」

「ダーのおかげ?」

「そうね、そうかも」


 そうしてあげましょう。嬉しそうにする姿は愛くるしいから。



 さて。せっかく来てくれたのだから、私のお手紙を届けてもらおうと思う。

心配は、ちゃんと持って帰ることができるかどうかだ。途中で落として、ジョナサンに叱られるのが嫌で、なかったことにされては目も当てられない。



 まずはジョナサンの近況を知りたい。多方面に渡り情報収集をしているだろうけれど「ティナちゃんの実父について」を最優先にして欲しいと伝えたい。


 ダー君の衣服に書き込んでしまおうかしら。それより手足に直書きがいい? 手足が短いから長文は無理だわ。

などと考えていたら、どうやら目つきが怪しくなってしまったらしい。



「もとひ? 少しだけ悪いお顔になってるみたいだよ」

「気のせいよ」


 珍しく遠慮がちに指摘するダー君に、フレイヤは微笑して取り繕った。



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