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アンドリューとアンディ

 フレイヤは気がついてしまった。狼はうるちゃんとカラスのぴぃちゃん、そしてクリスティナの親しさは一朝一夕に築いたものではないと。


 このコ達、絶対に前々からウチに出入りしている。ちゃんと玄関から入っているのかしら。ひょっとして住んじゃっているなどということは……? 妄想が広がる。



 知らなくていいことはあるのだと自分に言い聞かせつつ、腕のなかのダー君を眺める。


 どれだけでも見ていられる愛らしさは、さすが「得意は『可愛い』だよ」と本人が言うだけのことはある。

 呼吸に合わせて微動するピンクの頬は幸せ色そのもので、触りたくなる。




「クサリヘビをその幼児が連れて来たのですか」


 頭の整理がついたのか理解を諦めたのか、レイが口を開いた。

狼からは、目を閉じているだけで寝ておらず、話を聞いている気配がする。



「ダー君は『おいた』が過ぎるのよ。首を掴んで無理やり連れてきたみたいだったわ」



 始めは蛇に絡まれたかと思ったけれど、蛇の消え方を見れば被害者があちらであるのは明らかだ。これに懲りて次から油断しないに違いない。


 カラスの尻尾を掴んだ時にダー君にはしっかりと言い聞かせて反省させたのに、とフレイヤからため息のひとつも出る。



 騎士四家で残るは山猫。できるならダー君より先に山猫に会い「ダー君の姿を見たら全力で逃げて」とお願いしたい。


 ダー君が「しない」と約束しても、山猫に会えばすっかり忘れて尻尾を掴んで振り回す姿が目に浮かぶ。



「守護様方は親しい間柄ですか」


 そんな難しいことを私に聞かないで欲しい。質問の受け付けは、答えを持つものだけに限りたいフレイヤだ。


 恨めしげな目つきをすれば、勘のよいレイは続く言葉を飲み込んだ。



「レイさん、ずるちゃんが現れたのはアガラス様がいらしていたから、ということですね」

「劇の観客のなかに顔がありました。カラスがいるのは、おそらくマイルス・マクギリス氏もいたせいでしょう」



 「ではないか」と思う人物を見かけた。ここに来てカラスがいることで確信を深めた、とレイが説明する。


 それなんですが。カラスのぴぃちゃんはティナちゃんのお友達でどうも長いお付き合いみたいです、と教えて差し上げたいのはやまやま。

でも、本人が眠っている間に勝手に明かすのは気が引ける。


それよりマイルス・マクギリス氏だ。



「そのお話をしようと思っていましたの。イヴリンが氏を存じ上げていたので、私もお顔を拝見しました。気が付かれました? ご家族もご一緒でした」


レイが驚いた顔をする。


「奥様のミアさん、奥様の連れ子のアンドリュー君、娘のシャーメインちゃん」


 イヴリンから聞いたままを伝える。家族の肖像画の見本になりそうな一家だった。



「そのアンドリューですが」


 言葉をそこで切ったレイが寝ているクリスティナに視線を落とし、すぐにフレイヤに戻す。


「山でクリスといたアンディが、アンドリュー・マクギリスです」



 フレイヤの口から間抜けな空気音が漏れた。ダー君がもぞっと動くのを、抱え直して。


「それは……つまり?」


 先ほど狼が「自分の頭で考えろ」と叱っていたことを思い出す。どうか聞き流していただきたい。



「ティールームに妹を迎えに来てクリスと再会した時に初対面の挨拶をしたアンディが、アンドリュー・マクギリスです」


なんということでしょう。


「世間は狭いと言いますけれど、本当に狭いんですね」


 そしてどうやら自分は驚くと平凡な感想を堂々と口にするらしい。

もう少し他にありそうなものなのに、とフレイヤは言ってから後悔した。



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