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聖王国と騎士四家・4

「ダミアン?」


 頭の整理がつかないのに、また知らない名前が出てきた。フレイヤがあからさまに顔をしかめたのに、ジョナサンは気にしない。


「ここにいるから、挨拶させよう。ダミアン」


 言うが早いか、ジョナサンの真横に輝く金色の巻き毛を持つ男の子が現れた。

光沢のある白い衣とむちむちした手足は、つい手を伸ばしたくなるほど触り心地が良さそうだ。


 フレイヤが信じられないと目を疑うのは、およそ二歳と目される子供が宙に浮いていること。



「こんにちは、ダーだよ」


 ピンク色の頬の愛らしい笑い顔は、誰もが想像する天使そのものだ。


「まあ! 天使!!」


 思わず口にすると、ジョナサンがダミアンの頭をガシリと掴みフレイヤに背中を見せる。


 その背中にあったのは天使の白い羽根ではなく、コウモリのような形をした暗い色の羽根だった。



「そんな良いものではない。ダミアンは聖王家の象徴とされるコウモリだ。そして驚くべきことに、たいして役に立たない」

「王! ダーはダーと呼ばれたいよ」



 ダミアンは辛辣な言葉を気にせず「ダーと呼んで欲しい」と訴える。


「国を持たない王がどこにいる。嫌味が過ぎるぞ」


 ジョナサンの指が巻き毛頭を締め付けるので、フレイヤは気が気でない。



「ジョナサン、意地悪をしないで。私がダー君と呼ぶわ。よろしくね、ダー君」

「王妃さまは優しいね」 

「それを言うなら『元妃』だ。わざとだろう、ダミアン」



 いや、あなたが王でないなら妃もないわけで。などとこだわるのは、些末なことのような気もする。


 だってダー君の存在自体があり得ない。予想外の話ばかりで頭痛に耳鳴りまでしつつあるけれど、見慣れない生き物に質問する。



「それで、何が得意なの?」


 お手紙を届けてくれるのはちょっとしたお使いで、きっとすごい力を秘めているに違いない。

期待して待つフレイヤに、ダミアンは最高に可愛い角度で小首を傾げた。


「ダーの得意は可愛いことだよ」



 聞く相手を誤ったみたい。フレイヤはジョナサンに目を向けた。彼の口元に浮かぶのは皮肉な笑み。



「ダミアンは真実を語っている。能力の高い別の守護がついていれば聖王国が消えることはなかったかもしれないね」

「王、ひどい!」



 ジタバタする短い手足がとても可愛い。なるほど「可愛い」を一手に担っているだけのことはある、とフレイヤは納得したのだった。

 


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