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待って、あなたは死んだはず・1

 母娘の再会は水入らずにしてあげたいと、かねてからフレイヤは考えていた。


 叔父の家は広い。いきなりでも客用寝室の支度は整っている、今夜はそちらに泊まろう。

ティナちゃんとお母さんのためだもの、叔父に会うのは気が進まないなどと言っている場合じゃない。



 四人でお茶を飲み、フレイヤは適当なところで席を立った。


「すみません、毎年叔父のところへ挨拶がてら泊まりに行っておりまして。明日の夜には戻りますので、家はご自由にお使いください」

「え、お姉さん、お出かけしちゃうの?」


 すかさず返したクリスティナに、申し訳なさそうな顔をして留守番を頼み、用意してあった手荷物を片手に家を出た。



追いかけてきたレイに呼び止められる。


「フレイヤさんの家なのに、あなたが出ていくことはない。俺が出ます」


 思惑は透けて見えていたらしい。でも年始に宿が見つかるかどうかを考えると、叔父の家に自分が泊まるのが現実的。


「叔父への挨拶もお願いしていい?」

「それは」


 レイが言葉に詰まる。とても残念。

じゃあ、私が行くしかないわね。と、あくまでも元からの予定だと押し通す。



「では、せめて送らせてください」

「それより、レイさんが家にいてくれた方が安心です」



 そこまで言えばレイも黙るしかない。それ以上引き止めはしなかった。









 年始でも馬車は見つかるだろうと、大通りへ出る。新年二日目の今日から開いている店もちらほら。

 手土産の存在を思い出し、酒屋に寄ることにした。


 叔父の好きな銘柄、銘柄。頭を捻っても思い出せなくて、ワイン箱の前をうろうろしてしまう。



「どのようなものをお探しですか」


感じのよい店員が声を掛けてくれた。お任せすれば間違いない。


「年始の挨拶に行く叔父の好みを、忘れてしまって。歳は私の親くらい、役所勤めでたまにしか飲まない方に贈る一本を」


 具体的に言えば、店員は心得た様子で棚を探し始めた。



 黒の上下で接客する高級店もあるが、ここはそれよりくだけたお店。それでも新年だからか店員はジャケットを着ている。


「こちらはいかがでしょう。普段飲まれるものより、少しだけ上質なものです。ラベルデザインに凝るシャトーは少ないですが、こちらは女性オーナーが美術学校出身でひとつひとつ手描きしています。叔父様は喜ばれると思いますよ」


 叔父は舌だけでなく目からも味わうタイプだ。まるで知っているかのように勧める彼は、仕事がとてもできる。



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