クリスティナ王城へ行く・4
イヴリンさんは、その後も子供劇について教えてくれた。
「楽しそうでしょう、楽しいのよ。参加できるのは由緒ある家柄の子女のみ、と言っても『主催者推薦枠』があるから、平気。本当のところはね、そうしないとネズミや馬役の引き受け手がないのよ」
ネズミ役に馬役。それは、ときめかない。女の子はみんな別の役をやりたがると思う。小鳥役なら「はい、喜んで! 」のクリスティナだって、ネズミ役は辞退したい……できるなら。
イヴリンさんの勢いに押し切られて「ちゅう、ちゅう」いう私が目に浮かぶけれど。
レイが途中からお顔だけ真面目にして聞き流していたのは、クリスティナにはお見通し。
部下らしき男性に「ご歓談中、誠に申しわけございませんが、そろそろ次の予定に差し支えが」と、とても遠慮がちに止められるまで、イヴリンさんは話し続けた。
通りまで出てひろった馬車のなかで。
「クリスはイヴリンさんの子供劇に出るのか」
真っ先にレイが聞いたのはこれ。
「お姉さんに聞いてみないと分からない」
クリスティナの返事を聞いて意外そうな顔をする。
イヴリンさんと一緒に何かをするのは楽しそうだと思う。
でもフレイヤお姉さんに聞いてからでないと、勝手にお返事はできない。
イブリンさんがなにをしている人かは、レイが教えてくれた。
劇場支配人の奥様で、ご自分もお仕事をしているなんて、とてもカッコいい。
「興行主ってお仕事があるんだね」
「めったにない職だ、よほど大きな町でないと。田舎ならいても野師だな」
聞いたことのない「やし」にはならないからまあいいや、と疑問はそのままにする。
そのあとも続く何気ないおしゃべりのなか。
「年明けに、ジェシカさんが王都に来るそうだ」
レイがあまりに軽く口にするので、聞き流してしまった。よく考えて「えっ」となる。
「母さんが?」
「監視はいつもついているわけじゃないし、年末年始は他に駆り出されて目が離れる。その隙に王都観光というわけだ」
「こっちに住むわけじゃないの?」
「そのあたりは、おいおいだろうな」
おいおい、おいおい。
「クリスが会うのは二年ぶりか。長かったな」
山狩りから、男の子と間違えられえ学校に行くことになり、アルバさんのおうちに。
そこからルウェリン城でお世話になって、レイとお姉さんといる。
働いていないクリスティナでは、アルバさんちのアンはまだ迎えに行けない。
ひとまず学校が決まったらお手紙を出そうと思う。
アン、元気かな。




