山賊の頭・2
到着したのはオヤジと五人の野郎どもだった。どこか遠くからの帰りらしく、大荷物を持ち、腰には剣を差している。
短髪に髭のオヤジを真似して野郎どもも髭面が多い。
クリスティナには髭の良さは分からないし、ちょっとむさ苦しく感じる。
「おかえりなさい!」
元気に叫ぶと、振り返ったオヤジは目を細めた。
「しばらく会わないうちに大きくなったな。今も糖蜜を盗み食いして、ジェシカに叱られてるか?」
馬の背にくくりつけた荷物をおろしながら、からかってくる。そういうところが嫌い。
アンディのいるところで言うなんて、ひどい。クリスティナはむっとした。
「小さい頃の話よ。いつまでも言わないで」
「小さい頃、かぁ。そっかそっか、もう大きいもんな」
はははと、野郎どもからも笑い声が起こる。だから野郎って嫌なのだ、ただしアンディを除く。
みんなひどい。かっこ悪くて恥ずかしい。自分でも顔が赤くなっているのが分かる。
「もう大きくなったなら、いらないか?」
地面に置いた荷物から取り出したのは、蜜に漬けた木の実がぎっしりと詰まった瓶だ。
きらっきらでトロリとした金色がいかにもおいしそう。
欲しい、すごく欲しい。クリスティナの喉が勝手にごくりとした。でも……「ふんっ」と横を向く。
オヤジの手のなかで瓶は行き場を失った。
「やり方がイヤらしい。そんなんだから娘に嫌われるんだよ、もっと普通に渡せないかねえ」
濡れた手を前掛けで拭きながら出てきたのは、ジェシカ母さん。
叱られてきまり悪そうにするオヤジから瓶を取り上げて「ほら」とクリスティナにくれる。
「ありがとう、ジェシカ母さん」
嬉しくてうふうふしてしまう。
「おいおい、買ってやったのは俺だぞ」
文句を言うオヤジなんて、ふんだ。
「自分の棚に置いておきな」
ジェシカ母さんの言うそれは、ひと瓶丸ごとひとりで食べていいということ。
でもアンディには分けてあげようと思う。
オヤジに初めて会うアンディには、お土産がないはずだから。
戸口から動かないアンディのところへ戻り、瓶を見せる。
「後で食べよう。チーズにかけてもおいしいし、パンにつけてもおいしいのよ」
黙って頷くけれど、目はオヤジから離れない。お髭だし声は大きいし、見慣れないと怖いに違いない。
「大丈夫。オヤジは怖そうに見えるけど、ジェシカ母さんより弱いから」
クリスティナは、山賊の秘密を明かした。




