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クリスティナ王城へ行く・1

 今年のことは今年のうちに。

気が進まない感じのレイに、王城の部屋を覗いてくるよう勧めたのはフレイヤお姉さん。三人揃ってのいつもの朝食の席だ。


「フレイヤさんも行くなら」


 なにを言っているの、レイ。今日はお姉さんはお手伝いさんと一緒に大忙しだって言っていたのは、今さっきのことなのに。


ほら、お姉さんが困ったお顔になってしまった。



「レイと違ってお姉さんは忙しいの。私が一緒に行くからいいでしょ」


 このパンを食べ終わったら、クリスティナには特に予定がない。ひとりで行けないレイに付き添ってあげられる。



 レイがまだ何か言いたそうにするから、お姉さんがお茶のおかわりを取りに立った隙に「ジェシカ母さんがなにか言ったら『はい』しかないってオヤジが言ってた。それが円満の秘訣なんだって」と教えてあげる。


「一緒にしないでくれ」


 笑いながら手を伸ばして、お姉さんに可愛く結んでもらった髪を乱そうとするのはやめて欲しい。


 さっと避けて「食卓でふざけてはいけません」と注意する。レイは大人なのに、ダメなところがあるのだ。


「分かった分かった。行って早めに帰ろう」


話がついた。










 馬車を王城前で降りて歩くお庭の広いこと。冬なのにお花が咲いていると思い、よく見たら作りものだった。

これだけ飾るのはすごく大変だと思う。さすがは王城、うん、来てよかった。


 キョロキョロしながら歩いていると、レイが脇の下に手を入れてきた。くすぐったいと思う間に、抱っこされる。



「レイ、私歩ける!」

「それはそうなんだが。悪い、クリスに合わせているといつまでたっても城にたどり着けない気がする」


 ひどい言われように、クリスティナはぽかんとしてしまった。


「それにこのほうが、よく見えるだろ。高い位置から見放題」


それはそうなんだけど。


「もう大きいから」

「抱っこされるのは恥ずかしい」と言うのも恥ずかしい。


「大丈夫、俺が抱えていれば小さい子に見える」


 自信満々で言ってくる。そりゃあ、レイは立派な体格だから少しは小さく感じるかもしれないけど。



 説得する言葉を見つけあぐねるうちに、お城が近くなる。クリスティナの歩みとは全然速さが違う。これでは降りたいとは言いづらい、飲み込むしかなかった。


 

「忙しく働く人ばかりで、誰も俺達のことなんて気にしてないだろ」


 レイの言う通り、皆、荷物を運んだり飾りつけの具合を見たりで忙しそうにしている。


結局、ルウェリン家が賜った部屋の前まで抱っこで行った。



「鍵はあるの?」

「ない」


 それは不用心では。それとも鍵がかかっていて開かないとかね。


 レイが試しに扉の取っ手を引くと、軋みながらも開いた。

クリスティナは好奇心丸出しで、先に部屋に飛び込んだ。


 

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