秘密を告白、になるのかな・1
フレイヤとレイはクリスティナが起きているうちに帰宅した。
薪ストーブのお世話もちゃんとしたし、夕食もいつもの時間に食べた。
余裕で待てるのは、ひとりでお留守番ではなく、ぴぃちゃんとお留守番だから。今日もたくさん遊べて満足です。
「お帰りなさい、お茶を飲むならお湯も沸いてる」
ティーセットの準備も完璧。寝る時間まで、夜会のお話を聞かせてもらいたい。
「クリス、山賊になる前のことをフレイヤさんに話してもいいか」
コートを脱ぐやいなや着替えもせずに、レイが聞く。
そういうところがね、とクリスティナは残念な気持ちになった。
お姉さんの前で「いいか」と聞かれて「嫌だ」と言えるはずがない。
でも、話す前に聞いてくれただけオヤジよりいい。
オヤジは自分の話したい時に勝手に話して、ひとが文句を言うと「なんだ隠すほどの話でもないだろ」と笑い飛ばして、ジェシカ母さんに怒られてたもんね。
ジェシカ母さんと「鳥さんのことは口にしない」約束をしている。
でも母さんと城砦で出会ったことは内緒にしていない、野郎どもは知っていることだ。
「話してもいい」
夜会から帰ってすぐするお話だろうかと疑問に思いながら、クリスティナはおとなしく椅子に腰かけた。
「お留守番ありがとう、ティナちゃん」
お湯に蜂蜜のレモン漬けを入れた飲み物をフレイヤが三つテーブルに置くと、自分も席に着く。
「お姉さん、着替えないとドレスが皺になっちゃう」
「ティナちゃんが褒めてくれるから、まだ着ていようと思って」
湯気の向こうに見える優しい目が好き。
「クリスは城砦にいたんだよな」
クリスティナがうふうふしていると、レイが邪魔をした。
「いた」
「クリスの親御さんは、住み込みで働いてたってことでいいか」
いい。クリスティナが頷く。住み込みで働く人はたくさんいたから、珍しくもなんともない。
「レイさん、その話し方では朝が来てしまうわ」
たまりかねたように、フレイヤが口を挟んだ。さすが、お姉さん。お腹がぽかぽかしてきたら眠くなってきたところだ、だって子供だもん。
「私が聞くわね」とレイを止めて。
「マイルス・マクギリスさんというお名前に聞き覚えはないかしら。マクギリスさんは珍しいお名前じゃないけれど、小さい頃に聞いたことはある?」
「伯爵様のご弟様のこと?」
質問が私の分かることでよかった。即答したクリスティナに、レイとフレイヤが顔を見合わせた。




