表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/318

不思議なお客さん・2

 帽子を軽く持ち上げてクリスティナに挨拶をしたのは、帽子とお揃いのコートを着た紳士だった。


 お歳はレイより上、オヤジと同じくらいに見える。背は高くも低くもなく、笑ったお顔は感じがいい。

週に二回来るお手伝いさんは女の人なので、これはお客さんだ。



「フレイヤ・スケリット夫人がこちらにお住まいと聞いたのですが、ご在宅かな?」


 聞き取りやすい声だ。クリスティナは窓に少し隙間を作った。こうすれば私の声も届くと思う。


「お留守です。レイとお買い物に行ったから、しばらく戻りません」


 紳士が浅く頷いた。フレイヤお姉さんのお知り合いが、訪ねて来たらしい。


「君達は?」

「お留守番です」 


 答えてから、お返事がずれているかもしれないと気がつく。

お姉さんはひとり暮らしのはずなのに、子供がいるのを不思議がっているのかもしれない。



「私は王都にお家がないから、置いてもらっているの」

「遠くから来たのだね。レイというのは男性?」


 この紳士がお姉さんを好きなら、レイのライバル。


「レイは大人の男の人」


 自分と違って大人であることを強調しておく。

男性の表情は変わらない。



「なかで待たせてもらうことは、できないのだろうね」

それはだめ。

「お手紙を預かるくらいなら、できるわ」


「あいにく……」と胸のあたりに手をやって「書くものを持ってきていない」


 

 筆記具と紙を手渡すには扉を開けることになる。投げ落とすのは、ダメだろう。


「出直すのがいいと思う」


 クリスティナの言葉に、男性は白い歯を見せた。


「しっかりしたお嬢さんだ。あなたなら立派に留守番が務まるね」


 褒められて嬉しい。さっき考えなしに扉を開けようとしたことは、誰にも内緒。



 紳士の目がクリスティナからそれた。


「鳥を飼っているの?」

「ぴぃちゃんのこと? ぴぃちゃんなら飼ってるんじゃなくて、お友達」


 ぴくりとも動かず紳士を見つめるぴぃちゃんの背中を撫でる。今日も最高の手触りです。



「よく馴れているね」

「子供の頃から一緒にいるから」

「そう、子供の頃から。色々ありがとう、邪魔をしたね」


 帽子のふちに手を添えて別れの挨拶をする。


「お姉さんに、どなたがいらしたって伝えたらいいの? お名前は」


紳士が目を細める。

「彼女には伝えても伝えなくても。君にお任せするよ、聡明なお嬢さん。君にとって世界が優しいものでありますように」



 紳士は振り返ることなく通りに出ていった。すぐに人に紛れてどの背中が彼なのか分からなくなる。


 ぴぃちゃんが、すりっとクリスティナに体を寄せる。


「不思議な人だったねえ」


 ひとりと一羽は見えなくなった背中をしばらく見送っていた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ