不思議なお客さん・1
はうるちゃんが王都まで来た理由は分からないまま。
「貢ぎ物」のクッキーを食べて「お、ここがべっぴんさんの寝室か。いい匂いする、俺も泊まりてえ」と見回してぐふぐふするので、ぴぃちゃんが「ケダモノ、ケダモノ」と怖がり、クリスティナが「だめ、お姉さんと私の寝室だから」とはっきりお断りした。
「野郎は野郎同士、レイと一緒の部屋で寝てね」
王都まで「ひょい」で来られるようなことを言うのだから、夜は帰って寝ればいいと思う。
「俺は夜に強いんだ」
狼の活動時間は夜らしい。そういえば会うのは夜が多かったと思い当たる。
「が、俺ほどともなると昼も普通に動ける」
「さすが、はうるちゃん」
金眼を光らせて自慢してくる。口先だけで褒めてもご機嫌だから、まあいいや。
「貢ぎ物がある時は、呼べよ」
いつでも来てやる、と恩着せがましい言葉を残して、はうるちゃんは帰って行った。
それから数日後。フレイヤお姉さんとレイは久しぶりの夜会に行くのに新品の手袋がいるらしい。
通いのお手伝いさんが来るまでにお店に行って戻らなければ、と時間を気にするので「私がお留守番している」とクリスティナは申し出た。
ひとりの方がぴぃちゃんと遊びやすい。なので気にしないでお出かけして欲しいのだ。
クリスティナが再三勧めたので「美味しいもの、買ってくるわね」とお姉さんは約束してお出かけした。
ぴぃちゃんと「どっちの手にあるか」「こっちでした」をして仲良く遊ぶ。
はずすとぴぃちゃんはとても悔しがるので、それが楽しい。
コツ、コツ。
音がした。来訪を知らせる玄関扉についた手の形をしたノッカーの音だ。
「ぴぃちゃん、お手伝いさん来た」
急いで階段を降りようと立ち上がるクリスティナの前で、ぴぃちゃんが「ダメです、ダメダメ」と踊る。
そうでした。誰が来るか分からないから、二階の窓から下を見て顔を確認してから扉を開けるのがお留守番の決まり。すっかり忘れていた。
「教えてくれて、ありがとう」
駆け寄る勢いが余って窓に額をぶつけた。痛い。クリスティナは顔をしかめた。
ぴぃちゃんが窓枠にのり「いたい、いたい?」と心配する。
「最高に痛いじゃないから、大丈夫」
おでこをさすりながら下を見ると、こちらを見上げる人と目が合った。




