鳥と犬のクッキー・2
元は私? 私なにか悪いことしたっけ、レイを困らせるような。
クリスティナが考え込むと、ぴぃちゃんが「ない、してないです。ずっと良い子です」と加勢してくれる。……はうるちゃんを気にして控えめだけど。
「片付いたんならいい」
「そう?」
言葉とは違い、面白くなさそうにはうるちゃんの鼻が鳴る。
「ぴぃに食わせてたの、俺にも食わせろ」
ぴぃちゃんが、足でさっと自分のクッキーを寄せて隠そうとする。
心配しなくてもまだあるから大丈夫。しかも、はうるちゃん全部見てたよ。
「はい、どうぞ。狼の形の」
「どう見ても犬だろ」
半眼でのお返事が早い。犬も狼も形一緒じゃない?
クリスティナの考えは顔にありありと出たらしい。
「一緒にすんな、絶対」
「あんまり変わらなくない?」
「格が違うんだよ、格が」
「かく?」
「いいから寄越せ、それ」
クリスティナの持つクッキーを顎で示す。ぴぃちゃんと同じように、スンスンと匂いを嗅ぐのかと思って近づけると。
「ああっ。私の手までお口にいれた!!」
狼は目にも止まらない速さでクッキーにかぶりついた。ついでにクリスティナの手も口のなかだ。
噛むとは思わない、でも。
「舐めた! 舐めた! やめてって何回も言ってるのに、また舐めた!」
騒ぐクリスティナにニンマリとして、口を開ける。クッキーはなくなっていて、クリスティナの手はヨダレまみれ。
「ええい、はうるちゃんで拭いてやる」
はうるちゃんのヨダレなんだから、はうるちゃんで拭いてもいいよね。
「やめろ、クリスティナ――じゃなくて、もっとしていいぞ」
首回りからお腹にヨダレを擦り付けるように手を動かすと、嫌がるどころか喜ばせることになってしまった。気分は複雑。
はうるちゃんの毛は硬いからぴぃちゃんみたいに気持ちよくはない。適当にわしゃわしゃして手を引き、さり気なく自分のスカートで拭き直す。
「はうるちゃんは、本当に食べるんだね」
「ん?」
ぴぃちゃんがまだ隠しているクッキーを、はうるちゃんが横目に見る。慌ててぴぃちゃんが目をそらす。
「なんだ、ぴぃは食えねえのか。俺くらいになると『貢ぎ物』は、美味しく頂けるんだ」
それも俺が食ってやる、なんて言うから、お皿からもう一枚あげる。
「はい、はうるちゃんいくよ」
クッキーをほいっと投げると上手にキャッチしてもぐもぐとする。
「食い物投げんな」
食べたくせに。ちゃっかり食べてからお小言は、どうなの。
クリスティナの心にあったモヤモヤは、すっかり消え失せていた。




