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大人の会話・3

 相手が再会を望まない場合もあるなんて知らずに済めば越したことはない。

 会えて嬉しいと喜ぶ純粋な気持ちを踏みにじったアンディ君を、ティナちゃんが許しても私が許さない。



 フレイヤは歯ぎしりするような思いを外に出さないよう、瞳を閉じた。



「『あなた、誰?』では、甘すぎましたかしら」


 気持ちが落ち着いたところで、問う。ここにはレイしかいないから、返事をするのは当然レイだ。


「フレイヤさんなら、なんとしますか。親交のあった相手が他人のふりをしたのに、後日謝ってきたら」



 そんな経験があったようなないような。

知らない女に声を掛けられたという態度を人前で取られて。後日眉尻を下げて「先日はごめん」などと言われたら。


「ごめんなさい、ここでは少し。また、わたくしの方からお声がけいたしますわ」


 添えるのはあるかないかの笑み。

ようは「私が話しかけない限り、あなたから話しかけないでください」だ。


レイがひと呼吸おく。

「あなたを怒らせたくないな」



 地位ある夫や父を持つ女性は皆似たようなもので、自分だけがキツイわけではない……と思う。


 でもレイを脅すのは不本意だ。彼はこれから男爵の兄として社交界にも顔を出すのだろうから。

 若い頃から出ていてこのお歳で独身では、ご令嬢方に警戒されてしまうけれど、遅れてデビューなら遅咲きの超大型新人だ。引く手あまたで、気があれば婿入り先も選べるに違いない。


 その時には先達として、お家の評判の良し悪しなど相談にのるのも楽しそう。



「コートは、登城に相応しいものでしたか?」


 思い出したように聞かれて、フレイヤは頷いた。


「素敵でした、とても。デザインも正統的で、あれならちょっとした夜会も行けます」


 レイの口角が上がる。なにか余計なことを言ったかと不安になるより先に。


「でしたら、俺が行っても差し支えない夜会を見繕ってくれませんか」

「それは、かまいませんけど……」



 この時期、舞踏会は多い。きっちり出欠を取るものから、当日の気分で参加してよいものまで幅広い。


「私のご案内できるものは、貴族といっても下位、爵位を持たない方々がいらっしゃるものですわ」


 伯爵家で開かれる会を望まれても応じられるが、ひと手間ふた手間かかる。


 それで充分です。とレイはにこりとした。


「フェリーから『叙爵したら当家でも夜会を開くことになるので、見てきて欲しい』と」


 侍従フェリーの顔を思い浮かべつつ納得する。


 レイはコートと一緒に昼の正装と夜会服も仕立てた。夜会服姿を見る機会は、思ったより早そうだ。

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