見知らぬ人のように
アンディだ。こんなところで再会するなんて思わなかった。
最後に会ったのは、川を下るための筏だった。あの時はとにかく必死でアンディをお家に帰そうとした。
無事に帰れたかどうか、ずっと気になっていたけれど、熊の絵のお店で助けてもらえると教えたからきっと大丈夫だったと信じた。
やっぱりアンディはお家に帰れていた。高そうな服を着て可愛い妹を迎えに来ている。
妹がいるとは知らなかったけれど、お父さんともうまくやって良い暮らしをしているのだと思うと、クリスティナの胸は安堵でいっぱいになる。
私も色々あったの。順番に話したい。ああ、でも先にアンディのお話を聞かないと。
ぴぃちゃんも興奮して「アンディ、アンディですよ」とくちばしを動かしている。
「アン――」
「お世話になりました。お母様が待ってる。ご挨拶して失礼しよう、シャーメイン」
驚いていたはずのアンディはなんでもない顔をして、クリスティナの呼びかけに被せて妹に別れの挨拶を促した。
「さようなら」
シャーメインが兄の手を借りて椅子から滑り降り、ご挨拶をする。
反射的にクリスティナも立った。
「楽しいひと時をありがとうございました」
思考が止まっていても口から出たのは、教育の賜物。アンディは来た時と同じように会釈して、クリスティナに背中を向けた。
「ぴぃちゃん、あれアンディよね」
自信がなくなって確かめる。「ええ、アンディ、アンディですよ」とコクコクする。間違いない、アンディだ。
なのに知らない顔をされた理由が分からない。ぼうっとしつつ腰を下ろした。
どうして。会いたくなかったとか。あ、あれかな、あの時は髪の毛が短かったけど今は長いから私と分からなかったとか。
それならあんな風に目を見張ったりはしない。
自分で見つけた理由を自分で否定するのって、バカバカしいしがっくりくる。
「クリス」
戻ってきたレイに声を掛けられても、すぐには返事ができなかった。
「誰かと一緒だったのか」
アンディ。言いかけて、テーブルの上のお皿がふたり分であることに気がつく。
レイの言う誰かはアンディじゃなくてシャーメインのこと。
レイ、アンディって覚えてる? この間のケーキの女の子、お名前はシャーメインって言うんだけど、アンディの妹だったの。びっくりした。
そう言いたいのに、言葉にならない。
「クリス?」
だって泣きたくない。アンディが幸せだと知ったのに泣くのはおかしいから。




