冬のあれこれ・2
王城を訪問するのにはふさわしい服装があり、絶対にいるのは良いコート。
そんなものは持っていないレイは仕立て屋で高級コートを作った。
それを受け取る間、クリスティナはお菓子を食べながら待つことになった。
ナニースクール経営のティールームは、お願いすれば保護者がお買い物をする時間くらい子供を預かってくれる。
コートの脱ぎ方やティーマナーなども教えてくれるので「親が教えるより覚えがいい」と人気があるらしい。
「ナニースクールの生徒が店員さんで実習を兼ねているの」と教えてくれたのは、フレイヤお姉さんだ。
何回か来ているけれど、ひとりでお茶を飲むのは初めて。とてもお姉さんになった気分でお澄まししてしまう。
でも、ひとりではちょっとだけ心細い。レイは「すぐに戻る」と言ったけれど、もう「すぐ」は経ったような気がする。
うん、こんな時はぴぃちゃんでしょう。クリスティナが小声で呼ぶと、呼び終わらないうちにぴぃちゃんが現れた。
お利口さんのぴぃちゃんはテーブルに乗らず、隣の椅子に置いた小さなバッグの上に立っている。重さがないので、バッグが潰れたりもしないのだ。
「ぴぃちゃん、お茶はいかが」
断るのは分かっていて勧めるクリスティナに、羽先で「お気持ちだけいただきます」とする。解釈が合っているかは、いつもながら不明。
それでも差し支えは少しもない。
「レイ、まだ戻ってこないかな。ケーキもう食べちゃった」
ケーキを食べるのは、いつもフレイヤお姉さんより早い。ゆっくり食べていいと言われても、お口が勝手に動いてしまう。
ぴぃちゃんがお皿を見、奥を見するのは「おかわりしたら?」だ。
お菓子でお腹をいっぱいにするのはいけないことだと、まだ知らないらしい。
「もうひとつ食べる?」
え、実は人語が話せた!?
クリスティナがぎょっとすると、ぴぃちゃんが首を伸ばして「あっちです、あっち」とする。
隣のテーブル?
先に女の子がひとりで座っていたのは知っている。じろじろ見てはいけないと思って、顔を合わせない椅子にしたのだけれど。
話しかけられたのならお返事はいいだろうと、声のした方へ体ごと向いた。
「一緒に見に行く?」
にこりともせず誘ってくれたのは、クリスティナより小さな女の子。見覚えがある。
この子は覚えていないかもしれない。最初にお店に来た時にワゴンの前で会った女の子だった。




