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二十日大根と花占い・2

 アンディは二十日大根が嫌いだったみたい。

裏の畑に咲く花の中に腰を下ろして、クリスティナはぴぃちゃんに話しかけた。


 会いたい時に来てくれるぴぃちゃんは大切だけど鳥さん。お友達とはまた違う。


「アンディはね、嫌々食べるときのお顔をしてたの。で、ジェシカ母さんに叱られたの『作ってもらったんだから、美味そうな顔してお世辞のひとつでも言いな』って」


 ぴぃちゃんは「そうですか」の動きをした……たぶん。


「悪いことしちゃった。仲良くするのってむずかしい。ね、ぴぃちゃんと私はずっと仲良くしよう」


 羽根をちょいと動かすのは「もちろんですよ」だと思う。人と鳥ではお話しできないのは、案外よいことかもしれない。


 ぴぃちゃんの視線の先には、キンポウゲ。黄色のかわいいお花だ。食べるのは禁止、遊ぶのは大丈夫。



 クリスティナは思いついて、花を一輪手折った。


「ぴぃちゃん、見てて。好き」

花弁を一枚、指でむしる。

「嫌い」

もう一枚、そよ風に散らした。


 





 

 二十日大根が嫌いだったんじゃない。酸っぱい味が苦手なだけで。

自分なりに頑張って食べたのに、あんなにがっかりして部屋を出て行かれると、こっちこそがっかりする。


「疲れが出たね」


 複雑な気持ちでクリスティナの背中を見送るアンディは、その言葉でジェシカがずっと様子を窺っていたと気がついた。疲れが出たとは、僕のことだろうか。


「ずっと気が張ってたんだろ、そりゃ疲れて不機嫌にもなるさ。アンディはまだ子供だし」


 子供扱いは止めて欲しいと言えば、そのムキになるところが子供だと言われると知っているので、アンディとしては黙るしかない。



「あんたは器用で覚えも早いから、あたしらもつい、できるもんとして教えちまう。子供は手の抜き方を知らない。こっちが加減してやらなきゃいけないのに、悪かったね」


 そんなに器用でもないと自分では思う。

家を出てから初めて大人に謝られた。そう気がついて、言葉が染みてきた。


 おっかさんの考えでは、疲れると怒りっぽくなるらしい。

クリスはいつも通りで親切だった。なのにムシャクシャしたのは、ひとえに自分側の問題だ。


 それを「疲れ」で片付けてしまっていいのか。自問自答するアンディにジェシカが命令する。


「このあとはクリスと遊んでから、一緒に昼寝しな。同じ寝台で寝ると仲直りできるもんさ。目が覚めるころにはフルーツケーキを焼いておくから。今日だけの特別だ、そうそう期待するんじゃないよ」


 そら、行っといで。

アンディは台所を追い出された。


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