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クリスティナ初めての街歩き・1

 ありとあらゆる種類の馬車が通りを走る。幌のついたもの、屋根のないもの、ピカピカからボロボロまで。


 人も様々。クリスティナにはただ立ったいるだけに思える人、建物の陰で寝そべっている人、真新しい服に大きな帽子をかぶっている人。山にはいなかった人達だ。



 迷子にならないように、レイの手をしっかりと握って、瞬きも忘れてキョロキョロとする。


「クリス、やっぱり抱えてやるって」

「もう大きいから、いい」


 二度目のレイの提案を、この歳になってそんな恥ずかしいことができるはずない、と即座に断る。



「ねえ、お姉さんは違うっていったけど、やっぱり今日はお祭りなんじゃない?」

「これで普段通りらしい」



 信じられないクリスティナの目が丸くなる。こんなにたくさんの人が住む街があるなんて、どれだけ大きいのだろう。



 三人で買い物に繰り出した本日。

フレイヤが化粧品を選ぶ間、女性ばかりの店内には居づらいレイが外で待つと言うので、クリスティナも付き合っているところ。


 通り過ぎる人を眺めているだけでもの珍しく飽きない。




 数日前のことだ。フレイヤがクリスティナを連れて買い物に行くと言った。


『買い物なら商人を呼べばいい』

『――名士ルウェリン様と違って、うち程度では外商員は来てくれませんのよ』

『……』


 これだからお坊っちゃんは、と言いたげな顔のフレイヤお姉さんと、やっちまった雰囲気を隠しきれないレイ。

これもまたクリスティナをどきどきさせた。面白いから大丈夫なのだけど。


ちょっとジェシカ母さんとオヤジを思い出した。




 お店の人が家に来たら、お買い物に出られない。やっぱり自分でお店に行くほうがいい。クリスティナはひとり納得した。


 化粧品店の前は仕立て屋さんで服を作ってもらった。

 この後は「ティナちゃん絶対に気に入ると思うわ。でもレイさんは落ち着かないかもね」と、いたずらっぽいお顔をしたお姉さんお勧めのお店でお茶を飲む予定。



「王都っていいね、レイ」

「山にいるときも『いいね』と言ってなかったか?」

「山には山の良さ、街には街の良さがあるの」



 しれっと言い切るクリスティナに、レイが歯を見せて笑う。その間も手はしっかりと握ったまま。

人が多すぎて目が回りそうになっているのは内緒だ。



「お待たせしました。お茶のお店は近いのよ、歩きましょうか」


 フレイヤが店から出てきた。優雅にふわりと動くスカートがいかにも王都の人らしくて、素敵に見える。


 クリスティナはレイの手を離して、かわりにお姉さんの手を握った。手袋をしていても柔らかくて気持ちいい。



 ごめん、レイ。お山ならレイだけど、ここは断然お姉さんなの。


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