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二十日大根と花占い・1

 クリスティナは野菜を育てている。小さくてかわいい二十日大根だ。

外の畑で育てると「私が育てた」とは言えないので、素焼きの鉢に土をいれてもらって、台所の窓辺に置いている。



 二十日大根は外側が赤くて中が白い。収穫して切って、しばらく酢に漬けておくと、クリスティナの好きな薄ピンク色になる。


 今日、それをアンディに食べさせてあげようと思うのには、理由があった。





 薪を割るにはいくつかのやり方があって、使う道具も人による。


 斧を使う時は頭上に振り上げ、体全体を使って振り下ろす。これは少し大きな木を割る時。


 ナタはもう少し細い薪を作りたい時。ケガをしないよう薪を持つ手に気をつければ、慣れない人でも綺麗にできる。



 今朝、アンディの仕事ぶりを見に行ったら、木を斧で分割するところだった。


 いかにも重そうに運び、手つきも野郎どもに比べれば危なっかしい。

振りかぶっておろしても、刃がうまく中心に当たらない。


「アンディ、腕だけでしようとするのがいけないんじゃない? みんな膝が上下してスコーンって」


 身ぶり手ぶりで伝えると、アンディは一気に不機嫌になった。



「やれもしないくせに」

「…………」

「クリスもやってみたら、わかるよ」



 アンディのトゲトゲしい口調は珍しい。薪に斧を刺した状態で、クリスティナに「どうぞ」とする。


 これはちょっと私には大きすぎる。考えて、別の薪割り台の上に、アンディがしていたのより細い薪を置いた。

薪にナタの刃を食い込ませると、薪ごとナタを持ち上げて落とすように台にぶつける。気持ちよく割れた。



 これがクリスティナの教えてもらったやり方だ。大きな木には向かない。アンディが黙っているので、手近な分を焚きつけにちょうどいい大きさに割った。


 全部終わっても、アンディは口を結んだまま。見に来ただけのつもりが邪魔をしてしまった。

申し訳ない気持ちになりながら、クリスティナはその場を離れた。





 喧嘩はしていないけれど、アンディがよそよそしい。元のように仲良くしたいクリスティナは、大事にしている二十日大根を食べさせてあげることにしたのだった。


「クリスの育てた野菜を食べるなんて、王様だってできやしない。アンディは幸せ者だね」


 ジェシカ母さんは大げさだと思うけれど、そう言われてクリスティナの落ち込んだ気分は浮上した。


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