別れの予告
思うようにならない。試しに指を噛んでみると、歯が当たるのも感じない。
続けて草を抜きたくても凍えた指先はとても不器用な動きになり、根っこが途中で切れてしまう。
クリスティナが指先に息を吹きかけて温めていると、足元にいたぴぃちゃんが目に入った。
「ぴぃちゃん、私の真似?」
薄桃色の羽先をくちばしにあてている。見上げる瞳と仕草がとても可愛いので「ぴぃちゃん、羽で霰さわってないから、冷たくないよね」なんてつまらないことは、言わない。
少し離れたところで、地面を掘っていたにゃーごちゃんまで、作業を中断してこちらを見る。
まさかにゃーごちゃんまで、真似をする? クリスティナが期待して待っていると、名前を呼ばれた。
「クリス」
ウォードだ。
「なに? 」
ぴぃちゃん、にゃーごちゃん、ちょっと行ってくる。ふたりで遊んでてね。
小声で断って、小走りにウォードの元へと駆け寄った。
「手を温めろ」
置かれたのは湯気のたつ桶。
「はい」
クリスティナは両手を差し出した。訳が分からない様子のウォードに、ねだる。
「『こんなに冷たくなって、かわいそうに』ってすりすりして欲しい」
視線が霰くらい冷たい気がするけれど、クリスティナはそんなことでめげたりしない。
「して欲しい」
「……アンディはしてくれた、か?」
「してくれたのは、母さん。アンディはちょっと嫌そうに『はい、はい』って」
アンディは僕の手だって冷たいから意味ないよね、と言いたげにしていた。
そうじゃないの、とクリスティナは声を大にして言いたい。一緒の気持ちでいるのが大事なの。
諦めた顔つきのウォードがクリスティナの手を取り、両手で包む形でさする。
「これでいいのか」
それでいい。顎だけで頷いたのは、ちょっと偉ぶった態度かも。
「湯に手をつけたほうが早いと思うが」
「早いとかの問題じゃない」
もの言いたげにしたウォードは、しばらく黙ってクリスティナの手を揉んでいた。
「……苦労してばかりだな」
ぽつりと漏れた「苦労」とは、この草取りのことだろうか。それとも母さん達と離れて暮らすこと。親のいない子と比べたら、ジェシカ母さんがいる私は恵まれている。
だから大丈夫だけれど、言葉にするのは難しい。クリスティナは「うふ」と笑ってみせた。
「それだけ取れば足りるだろう。昼を食べたら行こう。近くまで送る」
別れの予告はごくさり気なくされた。




