クリスティナとウォードの夜
「眠くない」と、クリスティナは夜が更けてもおしゃべりをしたがってウォードを困らせた。
シンシア・アンと寝ていた夜を思い出しつつ、最近はフレイヤお姉さんと一緒に寝ている。
「たまには代わってくれよ、クリス」
レイが羨ましそうに冗談を言うけれど、クリスティナに譲る気はない。
「一緒に寝たい」と言えば、予想していたようで、ウォードは隣に寝転んでくれた。
なんとなく心もとない気分や闇の怖さが一気になくなるから不思議。
世界にウォードさえいれば、怖いものなんてない気持ちになる。
まだ話したいクリスティナをウォードが遮る。
「寝ろ。明日も草を掘るのだろう」
「明日取った分も見て、きれいなのをウォードにあげるね」
ウォードがクリスティナの肩をマントでくるむ。
「自分を優先すべきだと思うが」
眠さに負けつつあるクリスティナはもう半分目を閉じていて、答えなかった。
ようやく寝たか。ウォードは枕にしてやっていた腕をクリスティナの頭の下から慎重に抜くと、夜空を見上げた。
雲の垂れ込めた場所から少し距離を置いたので、星が見える。
断片的な話を繋ぎ合わせると。ウォードがブレアと共にルウェリン城へ潜入した夜には、クリスティナはまだ城にいたという。
「生け贄」の噂については「まったく知らない、それは嘘。はうるちゃんは人を食べたりしない」と答えた。
はうるちゃんとは、守護獣のことだろう。今もおとぎ話の世界で生きているらしい、クリスティナはまだ子供だ。
会話を重ねていくうちに、意味深い話を漏らしていた。
「ルウェリンさんの先代ご当主の願いは、騎士四家合議制の復活なんだって。……これでわかる? 言い方合ってる?」
ハートリーとマクギリスは長く家勢を維持して、城砦を奪い合う。アガラスはマクギリスと近しく、落ち目のルウェリンは傍観に徹していると見ていたが。
ルウェリンが地位を高めることで発言力を増そうと画策しているとは知らなかった。
合議制。枠組みを作るより制度を維持していくことのほうが遥かに難しいのだと、歴史が示している。
四家の均衡が保たれていたなら、血を流す争いにはならなかっただろうか。そう考える時点で、自分はハートリーの後継ぎにふさわしくない。
威圧的な父の相貌を思い浮かべ、ウォードは自嘲気味に唇を歪めた。




