草取りを頑張るクリスティナ
それも仕方ない。背負ってきた桶はおろしたけれど、手は土まみれでさっき顔にも土が飛んだような気がする。
泥だらけの可愛い子ちゃんなんていないもんね。納得したところで、仕事の続きに戻ろうと思う。
「ウォードも草が欲しくて来たの? 潰れちゃうから私が取るね」
「潰れるとは?」
「さきっちょがちょっと出てるだけだから、踏んじゃうの」
大人が踏むとダメになるのだと、もう一度説明する。
「その草が何の役に立つのか知ってるのか?」
「流行り病の特効薬」
それくらい知ってます。ふふんとクリスティナは得意げにした。
理由が分かっているほうが、仕事に身が入るし丁寧になるものだ。
「ひとりで来たのか?」
「うん」
だって、大人が来ても役に立たないならクリスティナひとりでいい。と思うのに、ウォードが難しい顔をする。
「誰にやらされている? これまでどこにいたんだ」
クリスティナの頭にコツンと当たるものがあった。ウォードも気がついて、会話を中断し同時に空を見上げる。氷の粒が落下していた。
「霰か。ここだけ不思議な天候だな」
「うん、あられ」
氷の粒は「あられ」と言うらしい。さも元から知っていたような顔をして復唱する。
横からの陽を浴びて、落ちながらキラキラと輝く霰は見たことのない美しさだった。
お姉さんへのお土産に持って帰りたいくらい。
「お土産にしよっかな」
「解けたらただの水だ」
「……」
がっかりさせてくれる。クリスティナの気持ちはウォードではなくぴぃちゃんとにゃーごちゃんに伝わったらしい。
「ここ、ここです」
「ここにもある」
たしたしと地面を叩いてクリスティナの注意をひき、草のありかを教えてくれる。
「さ、お仕事、お仕事」
気を取り直して、草取りを再開することにする。
「待っててね。手が凍えるから一度にたくさんは取れないけど、今日の分はウォードにあげる」
「自分の分は?」
「明日取る。今日は野宿をして朝にまた取るつもりだったから、大丈夫。ウォードはどれくらいいるの? たくさん?」
「クリスがいるだけ取った余分で充分だ」
遠慮しなくていいのに。会えて嬉しいし、前にお世話になったご恩返しもできていない。
生えている草を取るくらいでお礼になるかは疑問だけど、ないよりはいい。
「私、頑張る」
って、私は掘るだけ。見つけるのはぴぃちゃんとにゃーごちゃんだけどね。