思いがけない再会・3
クリスティナの背が伸びても、ウォードを見上げる角度は同じ。
フレイヤお姉さんはレイのことを「カッコいい」と言うけれど、ウォードも負けていない。レイはお髭を伸ばすとおじさんっぽいということを、お姉さんは知らない。
「会いたかったの」
「ご機嫌よう」と、きちんとしたお家の女の子らしくご挨拶しようとしたのに、口から出たのは別の言葉で。クリスティナは自分でも驚いた。
「ウォードのことは、全然考えなかった。だって考えると会いたくなるでしょう。会いたいのに会えないと悲しくなる。悲しくなると泣けてきちゃう。でも泣いても会えるわけじゃなくて、疲れるだけなの」
なにが言いたいんだ。そう言われるかと思ったのに、ウォードは表情を変えずに黙っているだけ。
「ウォードも私に会いたかった?」
会いたかったと言われたい。我慢できずにクリスティナはウォードにしがみついた。
予想外の行動に動けなかったらしく、簡単に捕まえることができた。お腹に抱きついて脅す。
「会いたかったって言わないと、ずっとこのまま」
ウォードが少し力を入れれば、クリスティナなんて簡単に投げ飛ばせるのは分かっている。ちょっとしたイタズラだ。
「会いたかった」
「へ?」
あっさり、あまりにあっさりと返されて、聞き違いかと、クリスティナは思いきり首をそらして見上げた。ウォードはにこりともしていない。
「もっかい」
クリスティナの求めに対して、眉間に皺が寄る。
「一度言えば充分だろう」
「……聞こえなかった」
「嘘をつけ」
「ほんとうだもん」
譲らない気持ちを締め付ける腕の強さで表現する。
クリスティナの頭上から、これみよがしなため息が降りそそいだ。
「会いたかった。もういいだろう、離せ」
「後ろ半分いらない。やり直してください」
「たちの悪さも、そのままか」
「たちが悪い」の意味が分からないけれど、きっと遠まわしに誉めてるんだと思う。だって少し笑ってるみたいだもの。それにしても。
「私、女の子っぽくなったのに、遠くから見て私って分かった?」
しつこい子は嫌がられると知っている。引き際と心得て体を離し尋ねると、ウォードがクリスティナを上から下まで眺めた。
ほら見てよく見て、と胸を張る。髪が伸びたし、お顔もお姉さんっぽくなって、何よりスカートを履いている。
「前も今も、同じように感じるが」
可愛くなったと言われたかった。
クリスティナの視界の端には、気の毒そうにするにゃーごちゃんとぴぃちゃんがいた。




