思いがけない再会・1
お天気のよい春のお山は気持ちがいい、ぴぃちゃんの白さと青空の取り合わせも抜群。
「お山はいいね、ぴぃちゃん」
「ホッホー」
「上手ねえ」
最近ぴぃちゃんは他の鳥の鳴き真似が上手になった。理由は「はうるちゃんにぴぃじゃないと思ってもらうため」らしい。
見た目を変えないと意味がないような気がするけれど、ぴぃちゃんが考えてしていることだから見守ろうと思う。
クリスティナはぐんぐんと歩みを進めた。
ぴぃちゃんが「ここですよ、ここ。ここ」とクリスティナを案内したのは、晴れているのにそこだけ重苦しい雲がかかっている下。
クリスティナの足元で繰り返し踊るダンスは「あの雲を目印にしました。やったね、ぴぃ。やりました、ぴぃ」
「目印が、雲?」
雲なんてすぐに形を変えるのにそれを目印にするなんて、はうるちゃんが知ったら「ぴぃでは、ちょい心配」とまた言われそう。
本当にここにあるのだろうか。
子供の体重なら潰さないと言われたけれど。クリスティナはつま先立ちで、慎重に近づいた。
キラキラして見えるのは草が光っているのかと思ったら。雲の真下の地面は氷の粒に覆われていた。小石の大きさなので冷たささえ我慢すれば、草を探すことはできる。
「さきっちょが出ていて新芽みたいな緑色って」
氷を通して見る地面のどこもここも緑色ですが。簡単に見つかると自信満々で来たけれど、途端に弱気になる。
「どれも、それっぽい」
氷をよけた手はすぐにかじかむ。赤みの出て痛い手に息を吹きかけながら、もう涙が出そうになる。
ぴぃちゃんがクリスティナのブーツをつつく。
「励ましてくれるの? ぴぃちゃん、優しい」
まだ泣いてないから大丈夫と笑うと、またブーツの甲をつつく。邪魔だと言っているような。もしかして……
クリスティナは氷の上に両膝を着けて、自分の踏んでいた所の氷をかき分けた。すぐにツンと出た艶のよい芽のような草を見つける。
「あった! あったよ。これでしょ、ぴぃちゃん!」
白い頭を草の真上まで持ってきたぴぃちゃんが、翼で大きく丸を作る。そして踊るのは「そうです、そうそう」だ。
これを根っこごと抜いたらお仕事成功だと思えば、手の冷たいのも爪に土が詰まるのも平気。
「ぴぃちゃんが見つけて、私が掘る。これでいこう」
ぴぃちゃんのお返事がない。どうかしたかと見れば、空を見上げて頭を上下させている。
なにをしているのだろう。手をとめて様子を窺うクリスティナに気がついたようで、すいっと飛んで戻り、肩に乗る。
さっきまでぴぃちゃんがいたあたりで目を細めていたのは、忘れもしない美猫。
「にゃーごちゃん!」




