表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/321

思いがけない再会・1

 お天気のよい春のお山は気持ちがいい、ぴぃちゃんの白さと青空の取り合わせも抜群。


「お山はいいね、ぴぃちゃん」

「ホッホー」

「上手ねえ」

 

 最近ぴぃちゃんは他の鳥の鳴き真似が上手になった。理由は「はうるちゃんにぴぃじゃないと思ってもらうため」らしい。


 見た目を変えないと意味がないような気がするけれど、ぴぃちゃんが考えてしていることだから見守ろうと思う。


クリスティナはぐんぐんと歩みを進めた。

 







 

 ぴぃちゃんが「ここですよ、ここ。ここ」とクリスティナを案内したのは、晴れているのにそこだけ重苦しい雲がかかっている下。


 クリスティナの足元で繰り返し踊るダンスは「あの雲を目印にしました。やったね、ぴぃ。やりました、ぴぃ」


「目印が、雲?」


 雲なんてすぐに形を変えるのにそれを目印にするなんて、はうるちゃんが知ったら「ぴぃでは、ちょい心配」とまた言われそう。


本当にここにあるのだろうか。


 子供の体重なら潰さないと言われたけれど。クリスティナはつま先立ちで、慎重に近づいた。



 キラキラして見えるのは草が光っているのかと思ったら。雲の真下の地面は氷の粒に覆われていた。小石の大きさなので冷たささえ我慢すれば、草を探すことはできる。


「さきっちょが出ていて新芽みたいな緑色って」


 氷を通して見る地面のどこもここも緑色ですが。簡単に見つかると自信満々で来たけれど、途端に弱気になる。



「どれも、それっぽい」


 氷をよけた手はすぐにかじかむ。赤みの出て痛い手に息を吹きかけながら、もう涙が出そうになる。



 ぴぃちゃんがクリスティナのブーツをつつく。


「励ましてくれるの? ぴぃちゃん、優しい」


 まだ泣いてないから大丈夫と笑うと、またブーツの甲をつつく。邪魔だと言っているような。もしかして……


 クリスティナは氷の上に両膝を着けて、自分の踏んでいた所の氷をかき分けた。すぐにツンと出た艶のよい芽のような草を見つける。


「あった! あったよ。これでしょ、ぴぃちゃん!」


 白い頭を草の真上まで持ってきたぴぃちゃんが、翼で大きく丸を作る。そして踊るのは「そうです、そうそう」だ。


 これを根っこごと抜いたらお仕事成功だと思えば、手の冷たいのも爪に土が詰まるのも平気。


「ぴぃちゃんが見つけて、私が掘る。これでいこう」



 ぴぃちゃんのお返事がない。どうかしたかと見れば、空を見上げて頭を上下させている。

なにをしているのだろう。手をとめて様子を窺うクリスティナに気がついたようで、すいっと飛んで戻り、肩に乗る。


 さっきまでぴぃちゃんがいたあたりで目を細めていたのは、忘れもしない美猫。


「にゃーごちゃん!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ