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クリスティナ行ってきます

 持ち出し袋を背負った上に桶をくくりつけてもらった。この桶に少し水を張って、根っこから抜いた草を運ぶつもりだ。


 クリスティナの珍妙な格好に、フレイヤは「ティナちゃんは女の子だし、さすがにこれは」とレイを見上げる。


「両手をあけたいから、これでいい」

「それなら、ありそうな場所まで、桶を持ってレイさんが一緒に行くのは?」



 ぴぃちゃんとおしゃべりしながら行きたいクリスティナにとって、その親切なご提案はちょっと困る。お断りの丁寧な言い方を考えるうちに、レイが難色を示した。


「フレイヤさんひとりに留守番をさせて、実家から誰か訪ねて来たら説明が面倒になる」


フレイヤが思いたあたるふしのある顔をした。



 山荘にいるのは、親元に帰る前のクリスティナとレイのふたりということになっている。


 女の人と住んでいるとなったら、噂にひらひらがたくさんついて違うお話になるのは、クリスティナにも想像がつく。



「大丈夫! 私には野性の勘があるし、ここと同じお山だし、山の中だからヘンテコな格好でも誰も見てないもの。明日には帰ってくるから、ふたりで仲良く待ってて」


 持ち出し袋を揺すりながら、元気にお出掛けの挨拶をする。


「罠には気をつけてね。私が言えたことじゃないけれど」


 フレイヤの言葉にコクコクするのは、クリスティナの肩に乗るぴぃちゃん。


「はい!」



 飛び立つぴぃちゃんを追って歩き出して、振り返る。


「ひょっとしたら二回お泊まりしてくるかも。食べ物は持ってるから、すぐに探しに来なくていいからね」


 なにか言いたそうにするフレイヤの両肩に手を置いたレイが。


「分かった、無理はするなよ。崖の途中とか足元の悪い岩場で見つけたら、諦めるんだ」

「! この山にそんな危険な場所があるんですか!?」


ぎょっとするフレイヤに、

「ない」

レイが口角を上げる。


「もうっ。からかわないでください」


 肩からレイの手を振り払いツンとするフレイヤお姉さんを見るレイの嬉しそうな顔といったら。

 はうるちゃんみたい。どうやらレイもオヤジ寄りらしい、がっかりしちゃう。きっと狼のおうちはみんなそうなんだ、じゃなければいい体の持ち主はオヤジっぽくなるのか。



「ティナちゃん。気をつけてね」

「お姉さんこそ」


 気を取り直して、クリスティナは今度こそ「行ってきます」と手を振って駆け出した。


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