頼りにされるクリスティナ・1
「分かった。引き受けるけど、私でできることにしてね」
ぴぃちゃんを呼びながら請け合うと、はうるちゃんの目がギラリとした。
「話も聞かないうちから引き受けるなんて、うかつ過ぎんじゃねえか」
「そりゃあね。でも、はうるちゃんにはお世話になってるし、困った時はお互い様でしょ。それに私、頼りにされるの好き」
フレイヤを抱えて階段を降りたレイが「クリスティナもお茶にするか」と聞く。断れば、大人ふたりでダイニングテーブルでお茶をするのが習慣だ。
「喉乾いてないから、後でいい」
顔だけ出して返事をし、また長椅子の後ろに引っ込む。
ぴぃちゃんはクリスティナの斜め後ろに位置を取った。いつかのように頭からパクリとされるのを警戒してのことだ。はうるちゃんのヨダレが嫌なのは、クリスティナにもよくわかる。
「頼みごとって?」
「この山に、流行り病の特効薬になる草が生えてる。それを取ってきてくれ。クリスティナとぴぃにしか頼めねえんだ」
「分かった、行ってくる。行ってくるけど、もう少し詳しく教えて」
「行ってくれるとは、ありがてえ。おうよ、なんでも聞いてくれ」
はうるちゃんの説明はこうだ。
旅の楽団がルウェリン城に売り込みに来た。叙爵すれば祝賀の宴はつきもの。となると、楽団は必要だ。宴は先のことだが、繋ぎをつける必要がある。
それで滞在を許可し、小さな室内楽の催し程度から始めようとしていたのだが。
楽団員の一部が、流行り病に感染していたらしく、高熱を出した。耳の下が腫れ、発熱、倦怠感と無気力が続く。
そしてそれは感染力が強く、ラング様にも症状が出ている、という。
「それならレイがいったほうがいいんじゃない?」
「その草はな、先端が土からほんの少し出てるだけで、気が付かずに踏み潰すともう使い物にならねえんだ。大人の体重じゃ無理だ。探す間に端から潰しちまう」
「なら、はうるちゃんが行くのは?」
見たこともないものを探すのは自信がない。詳しい人が行くのが順当では。
はうるちゃんの目が半分になった。
「俺に掘れってか」
「あ……」
はうるちゃんの指はクリスティナとは違う。繊細な草の周りの土を取り除き根っこごと抜くなんてことには向いてないお手々だ。
「私のほうがいいみたい」
クリスティナが「ごめん」と小さく頭を下げると、狼は「わかりゃいい」というように短く息を吐いた。
「ぴぃに、草の場所を教える。後はうまくやってくれ」
うわあ、はうるちゃんひと言ですませた。見事な人任せ。
クリスティナは両手を握りしめた。




