恋のお話からのオヤジ狼・2
「ラング様に『勝手に出てきてごめんなさい』って伝えてくれる? はうるちゃん」
殊勝にお願いするクリスティナに、狼は「こりゃ驚いた」という顔をする。
「家出なんて勝手に出てくるもんだろが」
「そりゃそうだけど」
ふあっと狼があくびをする。
「レイの手紙が届いてたから、いいんじゃね」
全然取りあってくれない。はうるちゃんを好きになることだけはないな、絶対。改めて実感しつつ。
「今日はどうして来たの?」
なにか大事なお話でもあったのなら、聞かないといけない。
「クリスティナが俺に会いたいだろうと思って」
言いながら「ここんち、いいな。しばらくこっちいるわ」と、目を閉じる。
「え!? 寝るなら、ここじゃなくてもいいでしょ。お家で寝れば。はうるちゃん、暇だったから来た?」
ちょっと、起きようよ。クリスティナがゆさゆさとしても、大型狼は少し揺れるだけ。
はうるちゃんがいたら、ぴぃちゃんが来てくれないじゃない。
「起きて、ねえ起きて」
一生懸命なクリスティナをからかうように、オヤジ狼は歯を見せてニンマリとした。
レイはフレイヤお姉さんに、とても親切にしている。この山荘に来て二週間たった今も。
「もう、階段もいいと思いますのよ」
「痛みでバランスを崩して落ちたらどうするんです?」
「手すりを掴みます」
「俺を安心させると思って、もうしばらく任せてください」
階段の上で、小競り合いをしている。
家主であることをちらつかせるレイに譲るのはフレイヤだ。
『俺の味方をしてくれよ』
クルミのはちみつ漬けをくれながら言われたら、クリスティナには「うん」しかない。その時にお姉さんの好みのタイプも教えてあげた。
私はなかなかいい秘密諜報部員になるんじゃないかと思う。
「押せ押せだな、さすが俺の子分」
また来たの。とクリスティナは思わず言いそうになった。
それほど、はうるちゃんはよく姿を見せる。ルウェリン城より話す回数が多いくらいだ。
でも、なんだろう。今日は少し違う感じ。
「どうかした? はうるちゃん」
階段の上までは聞こえないだろうけれど、長椅子の陰に隠れて小声で尋ねた。
狼は瞬きをひとつして、見つめてくる。
「見たらわかる」
「そうか、クリスティナは見ただけで俺のことが分かっちまうのか、ふっ」
だからその「ふっ」いらないってば。クリスティナが露骨に眉を寄せても、オヤジ狼は気にもしない。ぐるりと大きく部屋を見回した。
「今日、ぴぃは」
「呼べば来ると思う。ぴぃちゃんもいたほうがいいお話なの?」
「まあな。ぴぃとクリスティナに頼みがある」




