表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/321

レイ・マードックの正体・2

 花を摘むのを中断して、クリスティナとレイは並んで草地に座った。お話をちゃんと聞くためだ。


「まず名前は、レイ・マードックが本名だ。オヤジといる時は通称を使ってた、俺だけじゃなくて全員ね」

「捕まった時対策?」


クリスティナはひらめいた。レイが頷く。


「おっかさんが今いる場所を知ってる。でもまだ不定期で見張りがつくから、クリスが行くのは勧めない。手紙や物のやり取りならなんとでもなる」

「ジェシカ母さん元気?」

「元気元気。豪快なのも変わってない」


 なら良かった。クリスティナは嬉しくなって、にこりとした。


 

「俺達は解散させられて皆散り散りになったが、連絡は取り合ってる。船に乗ってる奴もいれば荷貨の運搬を仕事にしていたり、まあ色々だ。クリス、オヤジのことは聞かないのか」

「どっちでもいい」


クリスティナの冷淡さに、レイが苦笑する。


「オヤジは鍛冶屋と組んで剣の改良をしてる。剣術を教えてもいる」


 元山賊なのに、先生なんかしていいのだろうか。私が習うならオヤジじゃない先生がいい。



「ベンジー、あ、レイは?」

「俺はあちこちで働いて、実家に立ち寄ったところだ」

「ふうん」


 実家という言葉が引っかかる。はうるちゃんは、ルウェリンさんちの狼。レイを子分だと言っていた。



「レイ、お名前にルウェリンってつく? レイ・マードック・ルウェリンとか」


 レイの目が細くなる。

クリスティナは思いつきを順に口にした。


「実家に行ったのは、夜だった? 」

「どうして、そんなことを聞く。夜だったとして、なぜクリスがそれを知っている?」


「だって、私、ルウェリンさんちにお世話になってたもの。夜に騒がしくなったから、このお城も攻められて落ちるかもしれないと思って、早めに脱出したの。お姉さんもルウェリンさんちにいたから、一緒に来た」



 敵に囲まれると抜け出すのは難しくなる。けれど最初から完璧な包囲網は敷けない、どこかに穴があるものだ。ぴぃちゃんとはうるちゃんが手伝ってくれれば大丈夫だと思った。

 城を捨てて逃げるなら早い内だというのは経験上知っている。



 レイが心底驚いているのが伝わった。そして頭を抱えている。


「話がのみ込めないが、クリスだけじゃなくてフレイヤさんまで俺の実家に? なんでまた」

「うん。ラング様のお嫁さんにって誰かが推薦したみたい。でもお姉さんには、その気はないの」


 ここは強調しておかなくちゃ。そしてお姉さんが秘密諜報部員であることは絶対の秘密。



「ラング様はレイのなに?」

「俺は愚兄ラングは賢弟」


意味が分からない。


「もっと簡単にして」

「不出来な兄が俺、よく出来た弟がラング。だからラングが当主なんだ」


 はうるちゃん、知ってたんだから先に教えて欲しかった。今度会ったら忘れずに文句を言おうと思う。


ひとつ聞くと新たな疑問が生まれる。


「どうしていいお家の息子が山賊なんかになったの?」


 レイがすっと表情を改めた。つられてクリスティナも真面目な顔になる。


「俺が勝手に教えていいことかどうか分からないが、クリスなら理解できると思うから話す。オヤジが率いていたのはただの山賊じゃない。山賊を装った反ハートリー勢力なんだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ