はうるちゃんの子分登場・2
クリスティナのことをフレイヤが「旅のお友達でお家まで一緒に帰るところだ」と紹介する。
レイ・マードックと名乗った男性に、ひと目でクリスティナは親近感を覚えた。
馴染みのある野郎タイプだ。レイさんのほうが比べ物にならないくらいきちんとしているけれど。
「クリスティナ、九歳です」
ご挨拶に目を細める様子は、知り合いのおじさんみたい。
「俺のことはレイと呼んでくれればいい。君のことはクリスでいいかな?」
「クリスもティナも好きなほうでいい」
久しぶりにクリスと呼ばれた。
「お姉さんの足は?」
「ひどく折れてはいないようだ。でもできるだけ着かずに高く上げていた方がいい。しばらく安静にしていればよくなる」
「良かったわ。子供の頃からお魚は骨まで食べていたし、ミルクもよく飲んだの。キノコを食べて外遊びをしていたから、骨が丈夫になったのね」
魚の骨とミルクとキノコとお日様が骨を丈夫にするとは思えないけれど、お姉さんが信じているならそうなのだろう。
クリスティナはほうと息を吐いた。絶対に折れていると思っていたのだ。
クリスティナにひとつの疑問が浮かんだ。
「でも、ここからどうするの? 安静にするって旅は? お医者さんに見せなくていいの? お金ある? 足りなくなっちゃう……私、働くわ。レイさんどこか紹介して」
不安から始まり疑問を通過して依頼に変わる。
フレイヤとレイ・マードックは顔を見合わせ同じタイミングで笑う。
なぜ笑われたのか分からないクリスティナの顔に疑問符が浮かぶ。
「ごめん、ティナちゃんが可愛いから笑ったのよ。意地悪じゃないわ。お金はあるから大丈夫、心配しなくても半年遊んで暮らせるくらいは持っているし、足りなくなったら届けて貰えるから、ティナちゃんが奉公に出なくてもいいのよ」
私こう見えて使う分くらいは持っているのよ、とお姉さんが胸を張る。
どうやら本当のことらしいとクリスティナは疑いを解いた。
「で、動けないしばらくの間滞在する場所なら、俺が提供できる。この上に小屋があって夏の間はここで過ごすつもりで帰ったところだ。一人暮らしだから、気兼ねなくいてもらえる。宿賃がかからない分、町に泊まるよりいいと思うが」
願ってもない提案に、フレイヤが迷う顔をするのは遠慮と、足を思うように使えない現実を行きつ戻りつするせい。
こういう時のクリスティナだ。
「お姉さん、お世話になろう。歩けないし、この後の生活だって不便よ。レイさんがいたほうが絶対絶対助かる!」
だってはうるちゃんの子分だもん。レイさんがいるってことは、はうるちゃんもいるってことだ。
いまひとつ、なにに役に立っているのか分からない狼さん。