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通りすがりの・2

 通して欲しいと頼んだのに行く手を遮った男達の言い分を、フレイヤは黙って聞いていた。


 予想に違わず「どこから来たのか」から始まり「俺らは懐が寒い。貸してくれないか」となるのは早かった。


 懐が寒いとは、金がないということ。この場合の貸してくれは、返す気がないから「くれ」の意味だ。


 いくら渡せばお引き取りくださるのだろう。少し渡したら味をしめて、また追いかけてくることも考えられる。


 考えつくなかで一番楽な切り抜け方は、耳が痛くなるほどの大声で叫ぶことだろうか。

 通行人は自分の用事に気を取られていて、こちらの困りごとに気がついていないだけで、騒ぎを起こせば男達は一旦引く気がする。



「なあ、聞こえてないのか?」


 少し焦れた男の声を聞いて、心が決まった。

大声なんて久しく出していないけれど、出ないってことはないでしょう。大きく息を吐いて、はい、吸ってからの――



「どうした、知り合いか?」


 後ろから肩に手が置かれた。タイミングがあまりにぴったりだったので、唾を変に飲み込んでしまい、むせると同時に咳が出た。



 涙ぐんで苦しがるフレイヤの顔を覗くようにして「そこまで驚くとは思わなかった、すまない」と謝るのは、見知らぬ男性。

 いえ、あなたが悪い訳では。言いたくても、喉を落ち着かせるのに手一杯で余裕がない。



「戻りが遅いので探しに来たんだが、こちらは?」


 咳き込んで回らない頭でも、この男性は穏便に助けに入ってくれたのだと理解した。

 返事をするとまた飲み込んでしまいそうなので、手を左右に振って「他人です」と伝える。



「なにか」


 相手に向かって発した彼の声音は穏やかなのに、腹に響くような圧がある。三人組も同じように感じたらしい。

 それに、フレイヤが盛大に咳き込むことですでに注目を集めてしまっている。


 「いや」とか「別に」とか。へらりとした笑みを浮かべて三人組は「もう行こうぜ」と去って行った。



 難は去ったらしい。残されたのは喉のヒリヒリするフレイヤと、体の大きな男性だ。


「水、こういう時は水か?」


 水飲み場を探してくれようとするので、腕を掴んで引き止める。

 入れ物から調達していたら、持ってきてくれる頃には収まっているに決まっている。



 フレイヤの意図は伝わったらしく、かわりのつもりか遠慮がちに背中をさすってくれる。なんとなく合わせて呼吸するうちに、こみ上げる咳が落ち着いた。


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