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早速のトラブル

 男達はたかりの類だと思う。金品をちょっと融通してくれれば痛い目に遭いませんよ、なんて言いそうな顔をしている。


 フレイヤのような女性が供もつけずに旅行をするのは珍しい。様子を窺い、同行者がいないと判断して行動を起こしたのだろう。


 春になったら叔父に頼んで迎えを寄越してもらうつもりだったのに、急遽予定を変更することになってしまったから仕方がない。


 ここで逃げても、別の場所で同じ目に会うのは分かりきっている。

大半のお金をティナちゃんに一時的に預けてきた用心の良さを自賛しつつ。


「そこを通していただけませんか」


 薄笑いを浮かべる男達に、フレイヤは凛とした声を上げた。









 雑貨屋で「欲しい物をひとつ買ってあげるから、じっくり選んで待っていてね」と言われたクリスティナは、店の棚を隅から隅まで見ることにした。こういうお店大好き。



 フレイヤお姉さんが戻るまで時間はある。お店のおばさんはとてもいい人で、偶然にも看板には熊の絵が彫ってあった。

熊は釣り竿と魚を肩に引っ掛けている。熊は手づかみで魚を取るんじゃないかとクリスティナが不思議に思うと、売り物に釣り竿があった。


うちは釣具も扱ってますよという意味らしい。



 熊の店ってことはつまり、ジェシカ母さんの協力店。ならば安心していいと荷物まで降ろしてのんびり気分になる。



「好きに過ごして。うちは暇な店だからゆっくりしていって」と手作業を始めたおばさんに、ジェシカ母さんのことを聞いてみようかと思っていたら、いきなりぴぃちゃんが商品棚に現れた。


 驚くクリスティナを尻目に、左右に素早く動くダンスを始める。



「分身が出た?」


 違う違うと、ぴぃちゃんは激しく首を振る。

はうるちゃんなら話が通じるけれど、ぴぃちゃんとは込み入った話は難しいのだ。


「じゃあ、お姉さんが三人と話してる。当たり? それで、距離が近い。これも当たり?」 



 なるほど、ぴぃちゃんは別のお店に行ったフレイヤお姉さんに付いていたらしい。


「あ、分かった! お姉さんが三人の男の人にモテモテ!」


 美人さんだもんねえと納得するクリスティナに、ぴぃちゃんは「こけっ」と滑る真似をする。


「面白いね、ぴぃちゃん」


 全然面白くないですよ。大変なの、フレイヤお姉さんが大変なんですよ!


 ぴぃちゃんの披露した全身を使ったダンスで、ようやく事態を理解する。


「うそ、お姉さんが男の人に絡まれて困ってるってこと?」



それは一大事。助けに行かなきゃ!!


「おばさんっ、すぐ戻ってくるから! ぴぃちゃん連れてって」


 返事を聞かずにクリスティナは通りへと飛び出した。


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