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山の暮らし・1

 アンディが読み書きを教えてくれて、クリスティナが山のことを教える。


 稼業が山賊であると教えた時のアンディの顔は、傑作だった。


「『サンゾク』って、山で暮らす一族って意味だよね……?」

「それもちょっとはあるかもだけど、山の盗賊ってことだと思う」


 海の盗賊は海賊って言うんでしょ、たしか。

アンディが理解するまでに時間がかかったのは、彼が町の子で山賊を知らなかったからだと思う。


 山賊みんながそうかどうかはクリスティナも知らないけれど、ウチは狩りをし畑をして家畜を飼い、時に応じて人からお金を頂くのだ。


「まさか山賊だったなんて……。道を踏み外してしまった」


 ショックが大きすぎてアンディには受け止めきれないらしい。


「人の命を取ったりしないし、必要なぶんのお金をもらうだけだから、いいんじゃない? 馬車がぬかるみを気にしなくて快適に走れるのは、ウチが道普請をしてるおかげだもん」



 悪路を通るよりお金を取られてもこの道がいいと思ってもらうためだ。道幅を広くするのもすぐに伸びて邪魔をする草を刈るのも、タダじゃできない。

クリスティナがそう言うとアンディが黙る。



「……ここ、綴りが違ってる。繰り返し書くより、じっと見て覚えてから書いたほうがいいよ」


 黒い石板にろう石で書いた白文字を直してくれながら、ため息をつく。


「それにクリスが女の子だったなんて」




 「ついでだから一緒に湯浴びをしな」とジェシカ母さんに言われて、この家のやり方を教えようとクリスティナが服を脱いだら、アンディはひっくり返りそうなくらい驚いたのだ。


 あの顔もすごく可笑しかった、と思い出しては笑ってしまう。




 髪が長くてスカートを履いているのが女の子。対してクリスティナの髪は首が見えるくらい短く、虫刺されの防止に足首までのパンツがお決まりだから、間違えるのも当然。


 長い髪は枝にひっかかると危ないし、スカートは動きにくい。男の子になりたいわけじゃないので「僕」は使ってない。



「子供だから湯浴び一緒でいいよ」

クリスティナが言ったのに、アンディが一緒に湯浴びをしたのは最初の一度だけ。繊細で照れ屋さんだ。




 寝る時は、ジェシカとクリスティナの部屋で一緒に寝る。


 遠慮するアンディに「恥をさらすようだけど、男共は飲み過ぎることがあってね。フザケてあんたをかまってるうちに、無体を強いるといけないと思って」とジェシカが言えば、「一緒の部屋で寝かせてください。よろしくお願いします」と即答した。


 クリスティナには「むたい」が分からないけれど、聞けない雰囲気だった。

いつか自然に分かる日がくると思う。


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