行こう!ぴぃちゃん・2
ルウェリン様は構ってこないし、意地悪をする人もいない。食堂に行けば食べられるし料理人さんが「なんか食いたいもんある?」と聞いてくれた時にお願いすれば、次の週には出してくれる。
ここでの暮らしには、かなり満足していたけれど。
お利口な大人になるためについた先生には「お嬢様」と呼ばれる。
そして学習内容はといえば、フレイヤお姉さんが「今の子は難しいことを早くから習うのね。私の世代とは違って」と感心するような内容。
「そんなことまで習うの? 田舎のほうが教育熱心なのかしら。私これでも女子としてはかなり教育を受けさせてもらったほうだけど、そこまで細かくなかったわ」
伯爵家ご令嬢には必須でも、山賊の娘クリスティナには余分な知識だと思う。いまひとつ身が入らないのは、そのせい。お勉強に向いていないわけじゃない……と思いたい。
クリスティナは本物のご令嬢にならなくてもご令嬢風でいいのだ。
アンディは甘ちゃんなのに十歳で旅をした。私は甘ちゃんじゃないから、九歳でいけると思う。
「それならルウェリン様にひと言断りを入れてから、お母さんに会いに行きましょう。いきなりいなくなっては、心配するわ」
お姉さんが扉の前にいるので、出られない。
「ご当主は『いい』って言わない。なぜなら私にお母さんがいることも知らないから」
聞かれても言うつもりはなかったけれども、家族については不問だった。
そんなことより、話している間に騒ぎが収まってしまいそう。
「子供にもいろいろ事情があるのよ、お姉さん。私、行くね」
お姉さんがずっといるなら、私だってここにいた。仲良くしてくれてありがとうの気持ちを伝えたくて、見つめる。
困ったような顔をして聞いていたお姉さんは、細く息を吐いた。
微かな音を立てて扉を開錠する。
「ティナちゃんにそんなお顔をされたら、止められないわ。本当にお母さんが好きなのね」
え、間違ってる。ジェシカ母さんが好きはそう、合っている。でも今の私お顔は「お姉さん好き」だったのに。こんなに伝わらないなんて、ある?
あまりのことにクリスティナが口をハクハクすると、お姉さんは心配そうに瞳を伏せた。
「くれぐれも気をつけて、としか言えない私を許してちょうだい。道中の無事を祈っているわ」
固まってしまったクリスティナは「これ少しだけどお餞別」とお金を手に握らせてもらったのをきっかけに、ようやく動くことができたのだった。




