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狼の生け贄

 夜会と聞けば大規模なものを想像しがちだが、考えてみれば夜開く会はみな夜会。

 アガラス家の夜会は、ウォードの予想に反して軽食と談話を中心とした気楽なものだった。



「たいして面白くもないだろう」


 最初から夜会が楽しいなどと思ってはいない、などと言うわけにもいかず曖昧な顔をするウォードに、ローガンが苦笑しつつ弁明する。


「楽隊を招いていたのだけど、流行り病で人数が揃わないと断られてね。その連絡が遅かったものだから、代わりが見つからなかった。それでダンスができなくなったと知って、客が一気に減ったのさ」


そういうことか。

「ダンスが不得手なので、助かりました」


 ダンスを断る口実に眼帯をしているくらいだ。率直に述べたのに、気遣いととったらしくローガンが目尻を下げる。


「失礼を申し上げるが、御尊父とウォード君はタイプがまるで違うみたいだ」

「不肖の息子として知られています」


 ウォードが眼帯に指を添えると、ローガンは「いずれも同じ」と親しげな笑みを浮かべた。


「ま、息子世代は仲良くやろうよ」









 ブレアがアガラス邸に戻った。出かけた先の町では、ルウェリンが少女を探していたという噂がまことしやかに囁かれていたという。それがなんと。


「守護獣の生け贄にする少女? 聞いたことがない」


 守護獣はものを食ったりしないだろう。若干呆れ気味のウォードに、ブレアも頷く。


「面白おかしく尾ヒレがついたのでしょう。が、最近探すのをやめたらしいのです。さらに聞き回りましたが、女の子は間違いなく城にいます。それも聞いた感じでは若様の少女と同じ年頃の」

「『若様の』は余計だ」



 どうするか。ウォードは額に拳を押しつけた。


 ここまで来られる機会はそうそうない。帰りが遅れても数日なら寄り道で言い訳が立つ。

クリスティナに繋がるなら細い糸でもたぐりたい。確かめておかねば、ひきずるだろうことは自分でよく分かっていた。



「行ってみるか、ルウェリンに」


 予想していたらしいブレアは「やれやれ」という表情をしつつ、「お心のままに」と胸に手を当てる仰々しい礼をとる。


「やめろ」


 言って目を閉じる。クリスティナでなくても別人だと知れれば、それでいい。

クリスティナだったらどうする? 共に来ることを望んだとして、どうすればいい。



「生け贄とは思いませんが、なぜ少女を囲っているんでしょうね」


ブレアの疑問はウォードの疑問だった。


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